豊田@早大心理です fpr1805において Tomokazu HAEBARA さんは書きました: >(3)は(高野陽太郎さんの言葉を使え >ば)その他あらゆる変数について「一網打尽に」影響を除こうとする という記述を読んだ時にはすこし驚かされました.南風原さんまでが 高野さんのように(無作為抽出しなくても無作為割り当てしていれば, その他あらゆる変数について「一網打尽に」影響を除ける)と主張し 始めたのかと心配したからです(正しくは,無作為抽出と無作為割り 当てを組み合わせると,その他あらゆる変数の影響は「一網打 尽に」誤差項に組み込まれ,「一網打尽に」した分だけ実験の精度 が下がる.です.).でも,そうではないのですね. fpr1809の主張は理解できます.ただ,「本当にわかりやすい(中略) 初歩の統計の本」のような初心者教育の議論をしているのですから >> 調査研究にはランダムサンプルを念頭におく研究文化が在ります. >> 「ランダム割付」の実験研究にはランダムサンプルを念頭におく研 >> 究文化が在りません. >というのも事実だと思います。 と賛同なさるのでしたら, >−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− > ランダム割付あり ランダム割付なし >−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− >ランダムサンプル タイプA タイプB >−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− >便宜的なサンプル タイプC タイプD >−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− タイプAとタイプCは,心理学実験において実際上ほとんどない という立場を取るべきであると思います. そうしないと 「便宜的」な無作為抽出のお陰で 「便宜的」には,その他あらゆる変数について「一網打尽に」影響を除けて 「便宜的」に研究方法の「王道(高野さんの表現)」である あるいは 「便宜的」に「因果関係の推論に関しては有利な状況が作られる(fpr1793)」 というもってまわった結論になるからです. まず実験心理学者は,便宜的にも無作為抽出などしていないという前提 に立ちます.次に,たとえばメンタルローテーションを例に取ると「 年齢」や「年収」や「知能」の影響は,研究が想定している変数のレン ジでメンタルローテーションに決定的な影響は与えないことが著者・査 読者・専門読者の間で,実質科学的に納得・了解されているという立場 を取ります.ポイントは統計学で保障しているのではない,ということです. そして納得・了解できない変数が登場してきたら,もう1回実験するので す.一網打尽されているはずだなどと,うそぶいていてはだめだと言う ことです. むしろ「本当に(中略:この書名は吉田さんが付けたのだろうか?)初 歩の統計の本」のような学生向けの基本書では以下ように教えるべきです. >因果関係を確認するには統計的方法だけでは不十分である, >ことを,まず教えて,色々な方法の長所と短所をバランスよ >く論じるべきです.相関も統制もランダム割り付けも因果関 >係に迫るための,それだけでは不十分な役割の違った道具・ >武器なのです. ランダム割付だけを特別にbetterだといっては,いけません. -- -------------------------------------------------------------------------- TOYODA Hideki Ph.D., Professor, Department of Psychology TEL +81-3-5286-3567 School of Lieterature, Waseda University toyoda (at) mn.waseda.ac.jp 1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan --------------------------------------------------------------------------
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。