南風原です。 TOYODA Hideki さんからの引用: >>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− >> ランダム割付あり ランダム割付なし >>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− >>ランダムサンプル タイプA タイプB >>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− >>便宜的なサンプル タイプC タイプD >>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− > >タイプAとタイプCは,心理学実験において実際上ほとんどない >という立場を取るべきであると思います. 上の表の「便宜的なサンプル」は,たとえば自分の担当している 心理学のクラスを対象にしたり,学生がサークルなどを通して被 験者を集めたりする場合をさしています。心理学の研究では,調 査(相関)研究でも実験研究でも,このような形で被験者集団が 作られていることが多いというのが私の現状認識です。 上の表は意図的に単純なものにしましたが,「ランダムサンプル」 といっても,たとえば東大の学生の生活実態調査をするときに, 全数調査ではなく学生番号をランダムに選んで対象者を決めると いうように,かなり限られた母集団を考えるケースから,全国の 有権者を母集団とするケースまで,その規模はさまざまです。当 然,統計的に一般化できる範囲も,それに応じて限定されてきま す。 また,「ランダム割付あり」も「完全無作為」だけでなく,たと えば既有知識によって被験者をブロックに分けたうえで,各ブロ ック内で被験者を条件にランダムに割り付けるというケースも含 んでいます。そうした具体的なデザインによって誤差の大きさも 変わってきます。 >ランダム割付だけを特別にbetterだといっては,いけません. better than what? ということが問題だと思います。私は「ごく 初歩」の話をしているつもりです。たとえば,ある統計法を教え るのに,「数理的モデルから統計ソフト」という順で教えるのと 「統計ソフトから数理的モデル」という順で教えるのとで,ある テストで測られる理解度に関してどちらがより有効か,というテ ーマで研究をするとします。自分の担当する100人の学生をそ れぞれの方法で教える2つのクラスに分けることまでは決まって いるとします。このとき,ランダムに割り付けるのか,それとも 学生の希望で好きなクラスを選ばせるのか,効果の評価のために はどちらがベターか,というような問題を想定して話をしていま した。この例の場合,自由に希望で選ばせた上で効果評価をしよ うとすると,さまざまな交絡変数の影響が問題になってきます。 この場合は,ランダムに割り付けるほうが,これら交絡変数の影 響を除去するという点ではベターでしょう,ということです。「 ランダム割付」という操作自体の意義というのはそういうことだ と思います。 > 小生の現在の研究的関心は,実験データの共分散構造分析です. 実験データはランダムサンプルではないことが多いのに,実験デ ータの共分散構造分析では,母数の最尤推定や検定のためにデー タが正規母集団からのランダムサンプルであるという仮定が必要 になりますよね。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp Tel/Fax:03-5841-3920 東京大学大学院教育学研究科 (〒113-0033 文京区本郷 7-3-1)
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