[fpr 1960] 因子得点の合計点?

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

Re: [fpr 1947] 因子得点の合計点?

鈴木さん
面白い問題ですね.

(1)バリマクス回転後の4つの因子得点の合計というのは?
話をつなげながらまとめます.切り貼りなので元発言の趣旨とは違う引き方になってもごめんなさい.

岸本さん@[fpr 1951] 
> 普通に考えれば、因子分析直交回転を選ぶということは「独立した」
> 因子が存在すると解析者が信じていることを表わしている筈なので、
> それをまた合計するのは無意味でしょう。

ところが実際には斜交モデルが正しいデータであった.

鈴木さん@[fpr 1957]
> あの因子負荷行列は比較的美しい単純構造をしているので,そうなるべく配慮した分
> 析をしたのではないかな,と理解を示します.

バリマックス回転解からobliminm解を求めると因子間相関は次のようになります.

因子相関行列
因子	1	2	3	4
1	1.000	0.088	0.025	0.386
2	0.088	1.000	0.215	0.445
3	0.025	0.215	1.000	0.183
4	0.386	0.445	0.183	1.000

2次因子は不適解になるけどGorsuch 風に反復数を少なくして,

因子行列
	因子
	1.000
f1	.364
f2	.523
f3	.250
f4	.830
因子抽出法: 主因子法
a	1 個の因子の抽出が試みられました。5 回以上の反復が必要です。(収束基準 =3.635E-02)。抽
出が終了しました。

復元相関行列をml因子分析し,回転前の第1因子は次のようになり,一般因子が存在することを示して
います.

因子行列
	因子				
V1	.812
V2	.613
V3	.769
V4	.841
V5	.415
V6	.342
V7	.270
V8	.794
V9	.610
V10	.784
因子抽出法: 最尤法
a	4 個の因子が抽出されました。5 回の反復が必要です。



鈴木さん@[fpr 1957]
> もしも,
> F1 〜 F4 が数理的にも実質的にも無相関で,
> 完全な単純構造を得て,

完全に単純構造ではそうはならないでしょ.

> しかも,V ← λF のλが等しい値で,

これが重要なんですが,λは等しいというのは言い過ぎのようだ.

> かつ因子得点を順序尺度化(!)する
これはおいといて

> となると,因子得点は指標の和得点であり,因子得点の合計点は指標の総合計,また
> 第一主成分ともほぼ同じ−−というような状態になると思われるので,そのデータを
> もう煮て食おうが焼いて食おうが,盛付とかレシピ以外は同じ・・・

とりあえずのイメージは,2次元の場合,2つの因子の因子得点のベクトルをx軸,y軸(とりあえず
長さ1)とイメージし,Y=X の第1象限の(長さsqrt(2)の)部分が回転前の第1因子(主成分分析だろう
か?).3次元でも同様にxyz軸をかんがえる.

それぞれ無相関だが,合計するとひとつの方向性がはっきりする.

つまり本来斜交モデルが当てはまる場合は,直交回転解の合計点というものがちゃんと意味を持ってく
る.

単純な合計点や回転前の第1因子得点と違うのは,

岸本さん@[fpr 1951] 

> それは、第1主成分の総合得点としての性質が気に入らない場合です。
> ある変数に類似した変数をたくさん測定した場合、第1主成分はその
> 変数と同じ方を向くことになります。質問紙の変数群は本来同じ力を
> もった4因子から成っているとしても、たまたまある質問と聞き方だ
> けを変えたような質問をたくさんしてしまうと、その質問が総合得点
> を支配することになってしまうわけです。つまり、各因子に属する変
> 数の数が極端にアンバランスな場合、ある意味で公平な総合得点が期
> 待できないとも考えられるわけです。そこで、本来構成している因子
> を推定して、それを等しい重みで合計する... カイザーの正規化のよ
> うな意味で... ということも、まあ考えられないではないと思います。


(2)重み付け合計得点(回転前第1因子得点または第1主成分得点)と単純合計点
この問題は,以前[fpr 1928] 統計処理,実験法Q&A 特集号 で紹介した雑誌のなかにあります.
http://www.nuis.ac.jp/~mat/fpr/fpr2001/0039.html
の
III.E. HOW TO COMBINE MULTIPLE ITEMS INTO A COMPOSITE SCORE

答えはほとんど同じだから,単純合計点でよい.なお,重回帰分析の方面でも Maxwell(2000) が重みが
一定でよいまたは単純合計でいいことを詳しく論じています.

Maxwell,S.E.(2000). Sample size and multiple regression analysis. Psychological Methods, 5, 
434-458.

余談ですが,この論文のサンプル数の求め方については簡単に紹介しました.
SPSS ときど記(93) 2001/ 4/16 重回帰分析 必要サンプル数 
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki9.html#93

(3)順位の合計
際どい話題ですね.
2000年の日本心理学会大会ワークショップで使った斜交モデルデータ(N=1000)
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/pwork.html
を使って,因子分析して(4因子解),直交回転をした.因子得点を合計したものと,因子得点を順位
付けし合計したもの,回転前第1因子の間の相関をとったところ,

相関係数
Spearmanのロー 相関係数 
			因子得点	因子得点	回転前第1
			合計		順位合計	因子得点	単純合計
因子得点合計		1.000		0.978		0.999		1.000
因子得点順位合計	0.978		1.000		0.977		0.978
回転前第1因子得点	0.999		0.977		1.000		0.999
単純合計		1.000		0.978		0.999		1.000

恵まれた条件のもとですが,許せる範囲にあるでしょう.今後,実用的に許される条件等を詰めていく
必要があります.(回転前第1因子得点は第1主成分得点でも同じになりました)

なお,片平氏らの分析ではブランド数は1200です.

(4)高次因子について
日心のワークショップにおいて,2次因子のもとの変数での因子パタンがわからないといいました.す
ると狩野さんがなにやら求めることができることを含意する発言をしました(つまりかなり間接的な言
い方).比較的最近,Gorsuch(1983)の本に求め方が書いてありました.これはCattellのいっていること
と同じかな(本を返してしまったので確認できない).

高次因子については
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki8.html#90

階層因子分析については
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/tokidoki9.html#92
に書いておきました.

 なお,そこで引用している,Thompson(1990),Johnson and Johnson(1995) には少し誤解があるので
Gorsuchを必ず参照してください.


(5)最初の方で言及しているデータ分析(spss).

*直交回転解の因子負荷量から斜交解を求める.
Data LIST FREE
        /rowtype_ (a8) FACTOR_ (f2.0)  v1 to v10.
begin data
FACTOR	1	0.809	0.038	0.843	0.957	-0.003	0.203	-0.103	.531	.177	.265
FACTOR	2	.289	.436	-.017	.023	.930	.060	.184	.062	.884	.425
FACTOR	3	-.221	.526	.363	.049	.120	.884	.842	-.075	.130	.258
FACTOR	4	.268	.639	.118	.178	.112	-.029	.224	.779	.259	.746
end data.

FACTOR
  /matrix=in (fac=*)
/PRINT EXTRACTION ROTATION
/rotation oblimin(0).

*出てきた因子相関行列から高次因子を求める.
matrix data var= v1 to v4 /format =free full  /contents=corr.
begin data	 
1.000	.088	.025	.386
.088	1.000	.215	.445
.025	.215	1.000	.183
.386	.445	.183	1.000
end data.

FACTOR
  /matrix=in (cor=*) /ANALYSIS v1 to v4
  /PRINT INITIAL EXTRACTION rotation
 /DIAGONAL=.386 .445 .215 .445 
  /CRITERIA  FACTORS(1) ITERATE(5) 
  /EXTRACTION paf
  /CRITERIA ITERATE(100)
  /rotation oblimin(0).


*復元相関行列を分析する(excelで復元相関行列を求めた).
matrix data var= v1 to v10 /format =free full /n=10000 /contents=corr.
begin data	
1	0.2162	0.6278	0.821	0.273	-0.0223	-0.1542	0.6749	0.4426	0.4887	
0.2162	1	0.2924	0.1889	0.5432	0.4816	0.6612	0.5044	0.6297	0.8178	
0.6278	0.2924	1	0.8456	0.0378	0.48	0.2412	0.5088	0.2116	0.4018	
0.821	0.1889	0.8456	1	0.0444	0.2318	-0.0108	0.6464	0.2437	0.4158	
0.273	0.5432	0.0378	0.0444	1	0.1581	0.2924	0.132	0.8626	0.5136	
-0.0223	0.4816	0.48	0.2318	0.1581	1	0.7234	0.0158	0.1954	0.2861	
-0.1542	0.6612	0.2412	-0.0108	0.2924	0.7234	1	0.0622	0.3068	0.4338	
0.6749	0.5044	0.5088	0.6464	0.132	0.0158	0.0622	1	0.3406	0.7331	
0.4426	0.6297	0.2116	0.2437	0.8626	0.1954	0.3068	0.3406	1	0.6558	
0.4887	0.8178	0.4018	0.4158	0.5136	0.2861	0.4338	0.7331	0.6558	1	
end data.

FACTOR
  /matrix=in (cor=*)
 /CRITERIA  FACTORS(4) ITERATE(100)
/extraction ml /*paf*/
/PRINT EXTRACTION ROTATION
/rotation oblimin(0).

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