[fpr 1991] ブランドの順位付け

Kunihiro Tada

豊田先生、レス頂きありがとうございます。
多田@マインドウエア(SOM商人)です。

長くなりました。すみません。

>
> 1点,多田さんの御意見を伺いたい事があります.SOM
> はマップが一意ではありません.第2層のユニットの数
> や配置を換えると,マップの様相は一転することがある
> (というより,一転することが多い)のですが,それを
> どう感じますか?
> ランキングや特徴づけの場合は,色々な様相が見られて
> 面白そうですが,適用事例には銀行の格付けや,破産予
> 測などもあり,他人事ながら心配になる事があります.
> 一意でないマップからあのような決定問題を分析して
> いいのでしょう?発見ツールとしてのSOMの面白さ
> は充分に実感しているのですが,決定問題に対する適用に
> ついてはどう思われますか?

おっしゃるとおり、決定問題にSOMを使うのは慎重に臨むべきで
しょうね。

結論から言うと、実際の問題に適用する場合は、いくつものマップを
作成して、その中でもっとも品質がよく、目的の特徴をもっともよく
表しているマップを採択するべきかと思います。

どんなデータでもマップは出来てしまうわけですが、そのマップが
どのようなパースペクティブを表現しているかを無視して、いきなり
自分の目的に合わせて解釈するのは危険ですね。

「SOMはユーザーの意図なんて知ったこっちゃない」ですね。

(フィッシャーのアヤメのデータなどでをSOMを勉強すると、あまりに
見事に分類できるので、SOMが自動的に目的の分類をしてくれる
ような錯覚に陥ってしまうので危険でもあります。それで実際のデータ
に適用すると、なかなか上手く行かないので混乱するという、そんな
人が結構いらっしゃるのではないでしょうか。)

ユニット数で様相が変わるというのは、ほとんど見た目の問題で
本質的な違いは、それほどないように思います。(マップが表現
しているのは、多次元データ空間のトポグラフィックな順序づけなの
で、マップが回転したり反転したりすることは本質的な違いではあり
ません。)

それよりも、データをどのようなパースペクティブで学習させるか?
に気をつけるべきだと思います。

たとえば破産予測の場合、「支払能力」の分布がまだらになって
いるようなマップを使って、破産を予測するのは危険だと思います。
そのような場合は、パースペクティブを変えて、学習し直す必要が
あるわけです。

SOMを使う場合、全体のクラスタリングばかりに目を奪われがちですが、
まず成分ごとにマップを表示させて、変数間の依存性や各変数のマップ
の順序付けへの寄与に注意を払い、変数に適切な優先度を与えて(重み
を加減して)マップを作り直していく作業が必要です。

実際、そのような作業をしようとすると、データ前処理を含めて作業が
煩雑になります。マップの評価、データ前処理を繰り返す作業をインタ
ラクティブな操作でできるようにしたのが、Viscovery(r) SOMineです。

インタラクティブにSOMを操作していくと(けっこう迷路に入ること
もありますが)、多次元データの世界が直感的に見えてきます。
路地裏を探検して土地鑑を養うのと似たような感じでしょうか。
決定問題については、十分に探検したあとで、いちばん目的の
問題に適応するモデルを選ぶことをお薦めします。

個人的な見解として、SOMは「客観モデル」ではなく「適応モデル」
だと思います。(つまり、実用指向だということです)

#したがって、SOMが作り出すモデルが科学的モデルとして取り扱え
#るか?について、科学論(哲学)上の議論が必要だと思います。
#実在論的立場からはSOMは便法としか映らないだろうし、
#現象論的立場からは人間にとっての妥当な方法と映るだろうと
#思います。SOMの結果を一般の科学論文に採用する場合、
#科学論文の作法そのものを問い直すことが必要かもしれません。
#この辺については、まだ結論的なことは言えません。

今のところ、科学的な分野では、仮説創造の段階で使われるべきで、
また実利的な用途では、予測・判定の結果の的中率をチェックしながら
使っていくべきかと思います。ビジネスでは、日々、環境は変化して、
それに伴いモデルを変えて行かなければなりません。的中率をチェック
しながら、的中率が落ちてきたら、新しく学習し直したマップを採択して
いく、というのが実際の運用となるでしょう。一度マップを作ったら、
それを是が非でも押し通すというは危険だと思います。(そういう意味で
お役所的な会社が使うと問題が多いかもしれません。)

#ちなみにViscovery(r) Profiler (CRM向けの製品)では、SOMの
#モデルを適用したマーケティング・キャンペーンの結果を測定する機能
#もサポートしております。

多田薫弘
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マインドウエア
(ユーダプティクス・ジャパン)
代表 多田薫弘
E-mail: tada (at) mindware-jp.com
HomePage: http://www.mindware-jp.com/
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