信州大学の高橋知音です。 直接質問のお答えになっているわけではありませんが、長谷川さんの投稿に関連して、 有意水準についてちょっと書いてみたいと思います。 (1) 有意水準とeffect sizeについて 青木氏のホームページにあったという説明ですが、 実際のホームページを見ることができなかったので、もしかしたら何か別の意図があ るかもしれませんが、引用された部分だけを見る限り、有意水準について誤解を生む 説明なのではないかと思います。 有意水準はデータ収集の前に決めるType I errorへの許容度であり、実験効果の大き さや差の大きさを表すものではありません。例えばまったく同じ差であっても、個人 差やサンプルサイズによってpの値は変わってきます(繁桝・柳井・森 1999, p34)。 差の大きさや効果の量について言及するためにはeffect size, strength of relationshipの指標を計算する必要がありますし、APAでは論文執筆の際にそういっ た情報を入れるべきだと考えているようです(APAのpublication manual 第5版, p25)。 (2) P =.10について 「有意傾向」という表現はよく耳にしますが、厳密にはデータ収集前に有意水準を設 定したら、それにもとづいて帰無仮説についてYes かNoの判断をするというのが本来 の統計的検定だと思います。事前に設定している有意水準としては5%が一般的なわ けですが、盲目的に5%にこだわるというのも問題があると思います。 たとえば、新しい領域でまだ探索的にデータを検討しているような段階で、興味深い 現象を見逃さないために、あえて最初から有意水準を10%に設定するということがあっ てもよいと思います。有意水準をゆるくするかわりに、次の研究段階でさらに条件を 洗練させて有意水準を厳しくしていけばよいのです。Huck (2000)の"Reading statistics and research. 3rd ed." p.191にもType II errorの危険性がType I errorの危険性よりも高ければ.10 や.15といった設定も考えられると述べられていま す。 ======================== 高橋知音 信州大学教育学部 Tomone Takahashi Shinshu University
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