[fpr 2275] 4・5項目で1つのIRTの尺度

豊田秀樹

豊田@早稲田です

SHIBAYAMA Tadashi さんは書きました:
>#なるほど、先験的な情報が多くあればあるほどモデルの中に組み入れる
>ことによって解が「安定」するというわけですね。ただ、その一方で、
>「観測変数が3つ」ですむ状況や「観測変数と同じ数の因子を設定」でき
>るほど豊かな情報が得られている状況というのは、再び、三度かな、
>「奇異な」感じがするのですが、具体的な研究例等があれば教えていただ
>ければ幸いです。そちらに当たって少し考えてみます。

奇異な感じがするのは,
額に汗をかいて収集した知見をモデルに効率的に組み込めない探索的因子分析
をイメージなさっているからです.
当該分野の形のない適切な知識は,形のある変数やデータと同じくらい
あるいはそれ以上に統計モデルの解を安定させます.

以下の文献に8*7のサイズの因子パタン(負荷)行列の
確認的因子分析の分析例が載っています
これを御読みになれば,観測変数がより因子のほうが多くなる分析も
場合によっては成り立つことが実感できると思います.
同様の例を拙研究室ではもっと沢山分析していますので,
完成しましたら(1ヶ月以内くらい)に郵送でお送りします.

\item[] Marcoulides, G. A.  (1996). 
「一般化可能性理論における分散成分の推定:共分散構造分析による接近」
Estimating variance components in generalizability theory: The covariance structure analysis approach. 
{\it Structural Equation Modeling}, {\bf 3}, 290-299.  



>#ということは、逆に、今回のように下位尺度構成のために探索的因子分析
>モデルを利用する場合は、その後でIRTモデルを使うかどうかを別にしても、
>そもそも、良く練られた項目が下位尺度ごとにある程度準備されていなければ
>ならないということですね。

内容を吟味するのは,常に重要です.また
練りに練った項目ならたとえ3項目でも,項目母数は(狭い信頼区間と言う意味で)
安定して推定できます.
しかし私が3項目とか8項目とかのIRT尺度は論文で提案するの
は止めようと主張しているのはIRT特有の理由が主です.

1,項目プールを拡充する為の,等化の共通項目には,5項目くらいは必要です.
  新たにデータをとって項目分析をすると,その被験者集団との関係で
  使えなくなる項目がでる(拙著,項目反応理論「入門編」朝倉書店第7章)
  から10項目は欲しい.したがって3項目とか8項目のIRT尺度は,項目
  拡充の為の「のりしろ部分」だけということになります.
2.そもそも情報量のピークレベルが低くて,被験者母数の信頼区間が広くなる.
  たとえば前掲書・高橋弘司氏による「第3章 興味の測定:職務興味」では
  ピークレベルを目標3にしていますが,この場合被験者母数の標準誤差は
  0.58です.能力尺度値の95%の信頼区間は +−1.96*0.58
  です.集団における能力母数の分散は1として項目母数を求めているの
  ですから,この信頼区間が如何に広くて現実的でないか明らかです.
3.「被験者のレベルに合わせて出題できる」「項目と被験者は独立」などなど,
  IRTの長所を,そんな少ない項目数では実感できずに
  絵に描いた餅です.

はっきりした基準は示せませんが,せめて1尺度20項目くらいを最低の項目数
の目安にして(それでも少ないけれど)提案されないものは修正要求をするような
雰囲気を作ったほうが良いのではなかろうかということです.

そうしないと論文を通す為にIRTを使い,使われない尺度の
残骸ばかり残るということになりかねないからです.
20ー60項目くらいを目安に提案してもらえば,作るほうも使うだろうし,
IRTを使った事のメリットも直接的に実感できるので,使う人も
広まると思うのです.

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 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567             School of Lieterature, Waseda University
 toyoda (at) waseda.jp        1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
 http://www.littera.waseda.ac.jp/faculty/tyosem/index.html
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