[fpr 2539] the SD

Shigekazu Ishihara

村上さん

>EPA構造の普遍性とその問題についても、数量的能力がないのに、尺度の情報量
>が関係しそうだと考え、低分散尺度の因子分析からEPAのaffective structureが、
>高分散の尺度の因子分析からdescriptive structure が得られるという論文を書
>きました。自分では基本的には正しい方向だと確信していましたが、誰も認めて
>くれませんでした。他のテーマの研究をして遊んでいました。ちょっと反省です。

直接の関係があるようなないような話ですが,
我々が感性工学でつかっているSD法(とは離れていますが)では,
言葉のペアを反対語とは作りません.ほとんどの場合,XX-XXでない という
ペアを作ります.

その理由の1つは分布の問題です.
美しいー醜い というペアにして製品を評価した場合,
醜いと評価される工業製品はほとんど無いわけで,
この場合,明らかに評価は5段階,7段階のスケールの上では
左右非対称の分布になります.
もう一つの理由は,適切な反対語がないこともしばしばあることです.
たとえば洗練されたの反対語は何でしょうか.
ださいでしょうか.野蛮なでしょうか.
これもうかつに決めてしまうと,1つめの問題と同様,
最終的に著しく分布がゆがむペアができることがあります.
その結果,すでに相関行列の時点でどうにも使えないデータになりかねません.

これらの問題から,
美しいー美しくない
洗練されたー洗練されていない
というnot XXという言葉とペアにすることが多いです.
これも100%ではなく,たとえば
男性らしいー女性らしい と作ることもあれば,
男性らしいー男性らしくない とすることもあります.

因子分析を用いた研究では,しばしば片方の言葉しか
表記してないものがありますが(特にマップを作ったときに)
どうなのかなと思います.

だからといって,Osgoodを責めているわけではない.
Osgoodの研究では,工業製品を対象としていないので
そこまでOsgoodが悪いとしては気の毒である.
製品評価に使うときは,特に配慮が必要であるということです.

村上さんの言いたいことと合致しているかどうかわかりませんが,
Likert scaleやそれに類するスケールを用いた場合,
1つのスケール上での分布,複数スケール上での多変量分布に
注意しないと,それ以降の主成分分析or因子分析系or回帰分析系の結果が
どうにも妙な結果が混ざって苦労することになります.
(なお,少なくとも私の取ってきたデータについては
 多変量正規分布からめちゃめちゃに(有意なほど)はずれては
 いないということを確認しました.
 そのときは,堀さんのHPがとても役に立ちました.ありがとうございました>堀さ
ん
 多変量正規分布の検定はいまだ決定打がないのです.そのときは勉強させられまし
た.)

あるいは,村上さんのいわれるように,分散の大小,Skewnessに
なにかおもしろい情報がある可能性も大です.

他人の事は非難できません.我々も大昔に,どうにも主成分分析の
結果が変だと首をひねった結果,上にかいたようなやり方に
変更したわけです.

石原茂和
広島国際大学 人間環境学部 感性情報学科
724-0695 広島県賀茂郡黒瀬町学園台555-36
tel:0823-70-4890 fax:0823-70-4852
e-mail: i-shige (at) he.hirokoku-u.ac.jp


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