[fpr 2613] 心理統計学講座

豊田秀樹

豊田秀樹@早稲田大学心理学教室です

東京は晴天で,湿度がひくく,過ごし易い日です.
所用で返事が遅くなりました.

伊田政司先生はお書きになりました.
>初めまして。心理統計学を学んだ学生の社会での評価が芳しくない、
>とのことですが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

はじめまして.文学部の卒業生は,経済学部や商学部や法学の学生と比
較して,平均的に読む本の量は負けないのですが,社会の仕組みについ
てよく知らないままに,就職活動に入ってしまうようなところがあるよ
うに思います.法人は会計で動き,株式で資金を調達すること.人とけ
んかするには民法が必要であること.そのほかにもファイナンスやマー
ケティングの知識が多くの企業で求められていること.これらのことは
大教室の講義で学ばなくてもわかりやすい図解の本が出回っているので
,必ずしも社会科学系の学部を卒業しなくても,就職時に一般常識とし
て企業が期待する知識くらいは,文学部の心理の学生も「本来は」身に
付けられるのだと思います.評価が芳しくないというのは,そういう知
識の欠如による就職活動時の不利のことを意図して発言いたしました.

はがしげる先生はお書きになりました.
>私は心理学科の卒業生が大学で学んだことを社会で生かせるようにな
>って欲しいと思うし,就職した企業・組織で役立つような専門知識・
>技能を身に付けた学生を社会に送り出さないと,心理学科の未来はな
>いと思っています。今の心理学教育はアカデミズムの中で一生を終え
>る研究者か心理臨床家を育てることを目指していて,大部分の学部卒
>業生にとって心理学は単なる「教養」に過ぎないのではないか。だか
>ら,就職戦線では他の人文系学生と差別化できない。

まったく同感です.私の言いたいことをそのまま言っていただいたよう
な心持です.心理統計学は多くの心理学関係の学科で,必修でおかれて
います.その際,高学年における心理学を勉強するための,院生が研究
するための手段として位置づけられています.しかしそれだけでなく,
目的としての(しかも研究じゃない)心理統計学を展開しないと未来は
ないなと思います.『プレジデント』という企業人の読む雑誌に連載し
てみようと思ったのも自分の意識を変えてみたかったからです(堀先生
はfprでは,純粋な心理統計の文章をお書きになりますが,大衆紙で
は別人のような文章を書かれ,今の私の目標です).社会科学系の「今
日の日本」をどこか意識した内容で,企業人の視点をもたせ,社会の仕
組みを知る本を読むような演習を展開することが,できたらいいなあと
痛切に願っています.ちなみに今年の心理統計の4月から3ケ月間の演
習内容は以下のようなものです.

http://www.littera.waseda.ac.jp/faculty/tyosem/04B/index01.html

>はがしげる先生はお書きになりました.
>現実に入学してくる学生は臨床に興味が偏重した文系人間(=数学大
>嫌い)ばかりで,こういう話をしても反応はニブイです。豊田ゼミに
>学生が集まらないのも分からないでもない。

いえ,そんなこともなく,有難いことに,定員に満ちるくらいは希望者
はおります.ただ今年の4年生には進学希望者がいないので(進学する
なんて言われると逆に心配になるくせに),すこし寂しくなり, fpr2606
で,心理統計の大学院の受験者を募集をしちゃいました.

------------------------------------------------------------------------------
 TOYODA Hideki Ph.D.,  Professor,                    Department of Psychology
 TEL +81-3-5286-3567  School of Letters, Arts and Sciences, Waseda University
 toyoda (at) waseda.jp            1-24-1 Toyama Shinjyuku-ku, Tokyo 162-8644 Japan
 http://www.littera.waseda.ac.jp/faculty/tyosem/index.html
------------------------------------------------------------------------------


スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。