[fpr 2678] 心理学的

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

日心大会のシンポ「学習から学びへ−ごまかし勉強とauthenticな
学び」を聴いた.すでに向後さんの紹介がある.

http://d.hatena.ne.jp/kogo/20040915
ここでは佐伯胖氏の紹介がないので少しすると,
学びの現象学でしたね.学ぶときにどうしているのか.説明は具体
的でなかったのでいつもの迫力がなかった.だが,ピアジェの
「マッチ箱」の話しを思い出させるものであった.
河合隼雄ほか (2004) 学ぶ力 岩波書店
によると氏は好きなことしか学んでこなかったようだ.やっつけ勉
強というのはないというのは,まわりを引きつける力になるだろ
う.Deci の最近の理論とも関係しているようだが,このことは
まったく触れなかった.Deciらは従来の内発的動機付けだけでな
く,what とwhy の2つの面から攻める.

佐伯氏の説明は心理学的なものであったが,「学習から学びへ」と
はまったくなっていなかった.ほか2人の説明はシステム的に説明
しようとしたようだ.これは心理学といえるのか.

単にシステムの問題なら教育学者などにまかせればいい.個人の問
題があるのか,教育方法の問題があるのかなどを問うてみなければ
ならない.また,システムの問題であったとしてもカウンセリング
としてシステムを補完する方向で進むのか.

いずれにしても心理学的にどういうメカニズムがあるのかを考えな
ければならないが,そのきっかけさえ考察できていない.心理的に
はどういうメカニズムがごまかし勉強なの.ごまかし勉強からまと
もな勉強へ転換するメカニズムは.

例えば「反転理論」などは,このような転換について言及してい
る.
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/data/chap9-2.html#2.3
または
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/data/ppt/09c.ppt
に簡単な説明をしている.

そのほかたとえは,「分かった」という事例を経験させていけば充
実した勉強をするようになるのか?など地道に考えるべき問題がい
ろいろあるだろう.そのような心理学的考察一切抜きに時事の話題
に飲み込まれているのは,心理学的思考の衰退であろう.

今の時代は「お勉強」と「勉強」の区別はないのだろうか?「お勉
強」というのはお仕着せでやる勉強.つまりやっつけ仕事の勉強.

算数の文章題なんか嫌いな子どもはそうとう嫌いですね.昔,北海
道の小学校で国語力を上げるよう,文法的指導を徹底的にやった
ら,社会と数学の成績があがったそうだ.算数の文章題は文章の日
本語が難しかったのだ.小学生を家庭教師したとき文章題をとく方
略としてでてきた数字をいろいろ組み合わせて計算するというやり
かたをする子がいた.落ち着いて教えようとしても無駄であった.
間違いといったら,答えを全部消してしまうのである.大学生でも
結構この方略をとっている場合がある.これを簡単に見抜くには関
係ない数字も入れておくのである.すでに算数教育での実践者がい
る.わたしも調査の分析の試験でこれをやると結構ひっかかる.

結局,結果だけをもとめる成果主義のなれの果てでしょうね.親が
小学生の勉強ぐらいみてやれよ.そしたら,子どもはああやっぱり
役立つんだと思えるよ.などと思ってしまう.

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堀 啓造(香川大学経済学部)
home page http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/


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