[fpr 2694] 短縮尺度を作る

堀啓造

堀@香川大学経済学部です。

短縮尺度の作り方を指南した論文がでています.

 Stanton, J. M.; Sinar, Evan F.; Balzer, W. K.;Smith, P.  
C. (2002). Issues and strategies for reducing the length of 
elf-report scales. Personnel Psychology. 55(1),  167-194.

これを使った論文が
Richins, M.L. (2004). The material values scale: Measurement 
properties and development of a short form. Journal of 
Consumer Research, 31, 209-219.

Richinsを読むと項目数を決める方法がないようだ.妥当性などが
変わらないように神経を使っている.参考になるでしょう.

Gorsuch, R. L. (2003). Factor analysis. in J. A. Schinka and 
W. F. Velicer (eds.) Handbook of Psychology: vol.2 Research 
Methods in Psychology. Wiley. p143-164.

によると一つの因子に5項目が最適で,それより多くても,少なく
ても問題があるそうだ.最低5項目の基準は賛成だが,それより多
いのがダメというのはちょっと解せない.おそらく因子が分析に
よって分裂することを心配しているものと思われるが,もう少し項
目のある方が安心ではないだろうか.

ところで,
Rodebaugh, T.L. et al. (2004) More information from fewer 
questions: The factor structure and item properties of the 
original and brief fear of negative evaluation scale. 
Psychological Assessment, 16(2). 169-181.

というのも短縮版を検討しているが,2件法がオリジナルで5件法
にして短縮版でいいことを示している.IRTも使っている.従来2
件法では20項目というのが有名だが,5件法にするとそれより少
なくていいということだろう.

Richinsの論文では彼の作った尺度を検討しているのだが,たくさ
んの研究で使用しているのに驚かされる.尺度に対して誠意ある態
度がある.ところが日本では尺度に対して極度にいい加減なのが気
になる.Rosenberg 自尊心(自尊感情)尺度の訳はよく使われてい
るが,翻訳が一杯あって勝手なことをしている.詳しくは
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/sesteem.html
に.

また先日消費者行動のコンファレンスに行ってマーケティングでは
よく使われるServeQual について検討していた研究者に,日本語訳
があるのかと聞いたら,各自勝手に訳していて,しかも勝手に新た
な項目を付け加えているそうだ.ご本人も自分で訳すのが研究者の
態度だと思っているようだった.これでは蓄積はできないよね.自
分勝手な研究ばかりが増えるだけで,コミュニケーションも難し
い.ま特に日本(米国でもある程度そうだ)のマーケティングの研
究は基本的に過去をみないようだからそれでいいのだろう.

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堀 啓造(香川大学経済学部)
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