[fpr 2730] SPSS 共分散分析にある多重比較・等分散性の検定

村上宣寛

Goto Toyomi 様


堀さんが忙しいんでしょうね。多重比較法の書籍は

永田靖・吉田道弘「統計的多重検定法の基礎」サイエンティスト社、1997年

があります。分からない点を著者にメールで尋ねたことがあります。抜き刷りを貰いました。

永田靖「多重比較法の実際」応用統計学、1998、27、93-108

です。図書館から文献のコピーを取り寄せるとよいでしよう。

永田・吉田(1997, p20)によると、

多重比較法とは、全体としての有意水準を公称の値にコントロールできるように一回ごとの検定における棄却限界値を調整する方法である。

とあります。

5%水準の検定を複数回行うと全体としての有意水準が5%よりもずっと大きくなってしまいます。5%の有意水準だと、帰無仮説H0の成立する確率は.95。2回繰り返して検定して2回ともH0が成立する確率は.95×.95だから、少なくとも一回は有意になる確率は1-.95^2、3回だと1-.95^3...となります。これが検定の多重性です。棄却域をどうするかは、検定手続きによって違います。Bonferroniは5/3%と多めに棄却域を見積もっています。

基本的に多重比較と分散分析は別物だろうと思います。つまり、一般的には、分散分析と多重比較を同時に適用するべきではない(P.34)のです。二つの分析を同時に実施することによって、検定の多重性の問題が生じます。TukeyやDunnettの方法は一要因分散分析の手順が含まれていませんので、分散分析を行うべきではありません。ただし、Scheffe'の方法の手順には一要因分散分析の手順が含まれているので、一要因分散分析を実施してScheffe'の多重比較を行っても、検定の多重性は生じません(永田, 1998)。

以上は本の受け売りです。私は統計の専門家ではありません。やっと本が読める程度です。

このページには検定論の歴史があり、非常に分かりやすく感じました。

http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/toukei2.htm




> こんにちは。いつも勉強させてもらっています。
> 非常に初歩的質問でお恥ずかしいのですが、教えてくだ
> さい。
> 
> SPSSで、共分散分析を行うと、等分散性の検定、お
> よび、下位検定もいっぺんにできてしまいます。
> 等分散性が確立されない場合の下位検定にGames-Howell 
> 、 Dunnett  、Tamhaneなど、いくつかありますが、F値
> の結果が有意であるという結果が出ても、前提条件であ
> る等分散性が満たされなければ、分散分析をすることお
> よびその結果は報告する意味はないですよね?
> 
> ならば、Games-Howellなどの下位検定の結果をレポート
> するのみでよいのでしょうか?
> 
> うまく質問したいことが表現できている自信がないので
> すが、つまり、多重比較のみの結果を報告するという事
> もあるのでしょうか?
> 
> 自分のイメージでは、分散分析(全体) → 多重比較
> (詳細) と言う手順で、いくつかの群間の差を見るの
> だと思っていたのですが、「Turkeyなどの多重比較と分
> 散分析の整合性は低く、多重比較の前に分散分析をする
> と誤った判定を下してしまう」と説明されている方もい
> らっしゃるのですが、ならば、なぜ、SPSSの中には
> 分散分析と多重比較と、等分散性の検定が人まとまりに
> してあるのでしょうか?


私はSPSSは持っていません。多重比較も分散分析も計算手続き上共通要素が多いので、ひとまとめに組み込んであるのだと思います。エンジニアの都合でしょう。

一要因分散分析で有意でないのに、Tukeyの方法で有意になることもあるし、
一要因分散分析で有意なのに、Tukeyの方法で有意にならないこともある(永田,1998 )。

だから「多重比較の前に分散分析をすると誤った判定を下してしまう」のでしょうが、検定の多重性の問題も持ち込んでしまいます。

個人的には、個々の対比較に興味がある場合は、分散分析は行わず多重比較のみを実施しています。



> 
> どなたか、易しく教えてくださるとありがたいのですが
> 。よろしくお願いいたします。
> 
> 
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> 
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村上宣寛 


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