[fpr 2814] 臨床心理士のスクールカウンセラーとしての有効性について

市川伸一

Y.Hasegawa/長谷川芳典 さんは書きました:
>しかし、そもそも、この問題は
>
>●スクールカウンセラーとして臨床心理士を優先的に採用することが妥当か
>●臨床心理士と、そうで無い者とのあいだに時給の格差をつけることは妥当か
>
>という点が本質であるように思います。
>もし妥当であると主張する方がおられるならば、まずその方の責任において
>証拠を示すべきでしょう。

東京大学の市川です。長谷川さんのページも読みました。当時の日心連からの要
望提出にからんでいたものとして申し添えます。

私たちが3年ほど前に、日心連から文部科学省に要望したかったのは、まさに、
スクールカウンセラーに必要な資質の明確化でした。「スクールカウンセラーに
必要な要件とは何か」「臨床心理士がそれを満たしているので優先されるのなら
ば、他の資格もその要件を満たせば(あるいは、足りない部分を研修で補えば)
採用することにしてほしい」ということでした。

これが、3分の2にわずか足りず日心連では否決されたわけです。日心連も設立
直後(5,6年前)とは異なり、すでに「自分の大学は、やっとの思いで指定校
になった」という人(理事)が増えてきていました。すると、臨床心理士取得を
他大学との差別化に使いたくなるのは当然の成り行きだったと思います。上記の
要望は、臨床心理士の指定校制度に風穴をあけるものになってしまうので反対に
まわることになります。(スクールカウンセラーは、非常勤とはいえ、時給70
00円という高額で、家庭生活とも十分両立てきるという、臨床心理士の現在最
大のマーケットですから。)

日心連で否決されたので、この要望書は有志の学会の連名で出しました。また、
当時私は学校心理士の代表として文部省と折衝をして、上記のような質問をして
きました。そのときに、文部省の方は、「他の資格が、学校問題の解決に有効で
あることをできるだけ定量的に示すように」と言ってきました。帰りのみちみち、
「臨床心理士だって、効果を定量的に示したうえで優遇されたわけではないのに、
変な話だ」と言い合っていました。それなのになぜ優遇されているかは、皆さん
ご存知の通りです。

臨床心理士がそれなりに、スクールカウンセラーとしていい仕事ができるように
努力しているし、多くの臨床実践を背景にしているということは私も理解できま
す。ただ、全体として効果があるといえるのか、大量養成の時代にはいって質は
どうなっているのか、膨大な給与に見合っているのか、など疑問はつきませんね。
同様のことは、他の心理系資格にもいえるのですが、とくに優遇されているだけ
に、気になります。




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市川伸一  ichikawa (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp


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