fprの皆様 南風原@東大教育心理です。 murakami (at) edu.toyama-u.ac.jp さんからの引用: > 自分なりの妥当性概念のまとめです。「心理尺度の作り方」(仮題、北大路書房出版予定) > より。 > > ------------------------ > 妥当性(構成概念妥当性)の要件を以下に列挙しておこう。 (中略) > 歴史的に異なった理論家の妥当性概念が入り乱れて使われているのが日本の現状です。 > > 私の価値観では最初に列挙したものが妥当性のより基本的な証拠で、テストは最初に何ら > かの予測力を持つべきで、その次に、さまざまな証拠を積みあげるべきと考えます。だか > ら基準関連的証拠が一つもない心理尺度は信用しません。 > > 大部分の心理尺度が予測力を持たないのは、因子分析的方法のみによって作成されるから > です。個別の項目に一定の予測力がないならば、それらを束ねた尺度には予測力はないは > ずです。 > > どうして誰もこんな簡単なことに気づかないのでしょうか。あるいは、気づいていても語 > らないのでしょうか。 妥当性を,いろいろな「○○妥当性」というものに分割せずに一本化し,それを基準 関連的証拠を中心とするさまざまな「証拠」によって確認していくというスタンスだ と理解しました。挙げられた「妥当性の要件」のリストは,「妥当性検証って,どう やったらいいのだろうか」という疑問をもっている人にとって,具体的で有用な指針 を提供するものだと思います。 現実の項目分析・項目選択が,因子分析とα係数を中心にして,テストの内部構造に 注目した「内向き」のものになっていることはご指摘の通りだと思います。ただ, 「外向き」の視点の必要性について「誰も語らない」ということはなく,たとえば, 池田央(1973)『テストII』(東大出版会)の241頁には,「はっきりした外部基準が 設定されるときには,それとの妥当性係数が大きくなるような項目選択を考えてもよい」 として,具体的に,項目-全体相関は低く(α係数を大きくするのとは逆!),外部基 準との相関の高い項目を選択するという方法が示されています。 この方法が実際に有効性を発揮できるかどうかは,項目の取捨選択をそれによって決め るほどに「はっきりした外部基準」が利用できるかどうか,という現実的なところにか かっているように思います。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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