fprの皆様: 南風原@東大教育心理です。 Takashi TSUZUKI さんからの引用: > 来年から,心理学科の1年生に統計学を教えることになりましたので, > 評判の良い統計学のテキストについてお尋ねすることにしました. 一般に,どのテキストが最適かは, ・どこまで広く,どこまで深い学習を目指すのか。 ・何コマ使って授業するのか。 ・1冊のテキストで完結させるのか。 ・教師の指導力は? ・学生の資質は? など,さまざまな要因によって答えが違ってきますよね。 実際に統計の講義を担当した経験のある方々から,「上記の要因がこれこれ であれば,この本を」といった具体的なアドバイスが,いろいろと提供され ればと思いますが,心理統計学を専攻している立場からは,「基本概念の説 明に誤りがないものを選んでほしい」という気持ちがあります。たとえば, 「5%水準で有意」=「帰無仮説が正しい確率は5%以下」 というような誤った記述が後を絶たないのは,残念なことです。 最近出版された以下の2冊は,著者の統計理解について私が直接的に知って いることを根拠にすれば,(たぶん)そうした誤りが(少)ないものだと思 います。 (1)『よくわかる心理統計』(山田剛史・村井潤一郎,2004,ミネルヴァ 書房) (2)『統計分析のここが知りたい−−保健・看護・心理・教育系研究のま とめ方』(石井秀宗,2005,文光堂) (1)の「はじめに」には「統計の重要概念の説明を省略するのではなく, ここぞとばかりに一生懸命に説明しています。統計の基本的原理について正 しい理解をしてもらいたいという気持ちがあるからです。」とあります。ま た,エピローグでは,初等統計のテキストとしてよく読まれている『本当に わかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』(吉田寿 夫,1998,北大路書房)と本書との違いが述べられているので,そのうちの どちらを選ぶか迷う人には参考になるでしょう。 (2)の「まえがき」には,「「統計的に有意である」とはどういうことか について詳しく解説しています。」,「研究に必要な姿勢や,研究計画書の 作成などについて解説しています。」などとあります。カバーする領域は (1)よりだいぶ広く,構成や執筆スタイルも特徴的なものとなっていま す。 以上,「基本概念の正しい理解を」というひとつの観点から,思いついた本 を2冊,私の身近なところからサンプルしてみました。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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