[fpr 3001] 新宿をかける中年

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豊田秀樹@早稲田大学です(fpr3000超えましたね)

心理統計の話ではない雑談ですから,興味のない方は以後読まないでください.

 ここ数年,私は街歩きをよくします.ただ黙々と15キロ前後歩くことが多い
のですが,テーマを決めて歩くことも多く,歩く距離からすると村上さんや長
谷川さんに匹敵するフィールドウォーク心理学者です.昨日,自宅から新宿ま
で歩き,買い物を済ませて高田馬場のジムに徒歩で向かっている時のことです.
靖国通りを新宿の表,歌舞伎町を新宿の裏とすると,歌舞伎町と職安通りの間
は新宿の裏の裏の地帯です.新宿なのに昼間はほとんど人通りがなく,炎天下
のそこは,まるで映画「千と千尋」の昼の油屋周辺といった趣です.
 見ると,そこに制服を着た警官が4・5人いました.時間は午後1時,炎天下
で制服をきちんと着ている警官は汗びっしょりです.「たいへんだな」と思い,
すれ違いざまに一番近くにいた若手の警官に会釈をして通りすぎようとしたと
きです.「ちょと職務質問させてください」若手の警官が私に声をかけました.
職務質問は大学院生のころ,論文の執筆に詰まって,夜中に気分転換に自転車
に乗っていたころ夜回りの警官によくされたのですが,あまり気持ちの良い物
ではありませんでした.意味のない敗北感のような物を感じます.約20年ぶ
りに職務質問された私は,路上のアンケートと同じような気持ちで「すいませ
ん急いでいます」と答えて脇を通り抜けようとしました.そのとき警官は私の
予想外の行動をとりました.私の行く手を塞ぎ,両手で私の胸を突き返したの
です.私は面くらい,警官の顔を覗くと,はっきりとした敵意を含んだ目で私
を睨んでいます.
 私は突き返されたことと,その目つきに多少腹をたてました.「職務質問は
拒否します」と述べてからジョギング程度のスピードで私は走り出しました.
しかし,その後の展開も意外でした.その若い警官は「逃げたぞーー」と大き
な声をあげ,追いかけてきます.更に後ろの気配の足音も増えているようです.
50メートルほど走ったあたりで私は2名の警官にタックルされました.3人
目は私のリュックのチャックを開けようとしています.(ここで抵抗すると公
務執行妨害になるな)と思い「手を離してください,身体検査は拒否します」
と静かにいうと,離してくれました.「わたしのどこが不審なのですか?」と
尋ねると「そのリュックだ,中に覚せい剤かナイフかケン銃が入っているかも
しれない」と言います.あまりのバカバカしい言いがかりに議論はやめようと
決心し,私はゆっくり次のように言いました.「リュックをしょっているのは
フィールドウォーカーだからだ.それは不審の論拠にならない.私を拘束する
権限は貴方達にはない.私に触るな」何故ゆっくり話したのかというと,立ち
ふさがる3人にぶつからずに(制止させずに)走り去る経路を探していたので
す.運良く虚をついて3人にぶつからずに私は走り抜けることに成功しました.
もちろん彼らは追ってきました.私は,交番に助けを求めるわけにも行かず,
そのままゆっくり高田馬場まで走り続けるつもりでいました.ゆっくり走った
のは自分が交通事故などにあわないためです.しかし年配の警官の「もういい
よ」という声が後ろでして,彼らは私の追跡を中止しました.
 リュックの中身は着替えと,直前に買った原田知世主演「時をかける少女」
の映画のビンテージパンフレット(趣味ではなく,あくまでも研究資料)くら
いのものだったので,見られてもまったく問題ないものでした.いまから考え
ると短時間なら職務質問や身体検査に応じても良かったのです.原田知世のパ
ンフを見て,年配の警察官が「実は私も学生時代にファンでした」なんていう
和み系の話の展開になったかもしれません.最初の接触における若い警官の態
度が横暴であったことが(法律で言うところの物理的有形力を直ぐに行使した
ことが)拒否の直接的原因であったと思います.愛想のよい笑顔は論理の100倍
も重要だと思いました.向こうも若くて怖かったのかもしれませんし,暑くて
気が立っていたのでしょう.大人気ないことをしたと10%くらい反省してい
ます.でも警官に「逃げたぞー」なんて言われて,追いかけられたり,更にタ
ックルされたりなんていうドキドキ体験はめったに味わえないので90%は得
した気分です.これだからフィールドウォークはやめられません.
 しかし家に帰って法律を調べると,私の対処は基本的に適法ですが,こじれ
るといろいろ面倒なことが起きる可能性があることがわかりました.職務質問
は,基本的に快く受けてあげたほうがよく,これを読んだ良い子はマネをしな
いようにしてくださいね.



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