[fpr 3007] 「識別不定」を使いましょう

南風原朝和

豊田さん,fprの皆様

南風原@東大教育心理です。

toyoda (at) waseda.jp さんからの引用:

> 「SEMの識別問題とは何だろう」と初学者が正しく理解したり,専門家がまじめに
> 考えるためには,ある場所では専門用語として使用し,ある場所では日常用語として
> 使用し,混ぜて用いたのではダメで,
> 不能:解が1つもない
> 不定:解が無数にある(あるいは複数あり,本質的に1つに定まらない)
> のように1つの言葉には1つの意味だけを与えるようにすべきです.1つの領域で
> 1つの言葉に2つの意味を与えたら思考・理解が阻害されます.

数学の文脈で,単に「不能」「不定」と言えば,これは方程式に関すること
であり,上記の意味であることは間違いなく伝わると思います。

いま問題になっているのは「識別」という限定を付けた「識別不能」という
表現です。この表現では,「方程式として不能」と誤解されてしまうという
のが豊田さんの主張だと思います。それで,「識別不能」と呼ばれているの
は,むしろ「方程式として不定」という状態のことだから,「識別不定」と
呼ぼうという提案だと思います。つまり,方程式特有の用語を,識別問題に
もそのまま持ってきて使おうという提案だと思います。

最初に書いたように,それに対して反対ということではありませんが,私は,
識別問題は,根っこは(レベル2の)方程式が不定であるか否かの問題では
あっても,「必要な制約条件が欠けているために方程式が不定になり,一意
的な解を得ることができない状態を識別不能という」というように,専門用
語として「識別不能」(その反対は「識別可能」)という言葉を使うことに
しても,特に問題は感じないということです。(ちなみに,「識別不定」だ
と反対語は何になるでしょうか。)

むしろ,岡本さんが指摘されたように,「識別」という言葉自体を,もっと
ズバリわかりやすい表現に変えられないか,ということは思います。

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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