[fpr 3010] 「識別不定」を使いましょう

岡本安晴


 岡本@日本女子大学心理学科です。

 「識別」は、広辞苑(電子辞書)では
1.みわけること。「ひよこの雌雄をーする」
2.〔生〕人または動物が、質的または量的に異なる二つの
  刺激を区別し得ること。弁別
となっております。
 この意味では、「識別が不能」という言い方は可能ですが、
「識別が不定」という言い方は日常用語としては不自然と思います。

>  レベル1:共分散構造に関する方程式
>       例:Cov(yj,yk) = Σg βjgβkg
>  レベル2:最適化に関する方程式
>       例:dL/dβjg = 0

 レベル1は、モデル構成のレベル、レベル2は解法のレベルになっております。
適合度を問題にしないならば、いかなるモデルも可能であり、不能ということは
おかしいと思います。モデルとデータはなんらかの確率モデルにより関係付けられて
おります。
 レベル2は、解法のレベルなので、解が不定(identifiableでない)とか
解が存在しないとかの問題がありえます。尤度を基準としているときは、
解の範囲で最大値をとるものを求めるので、「不定」はありえても「不能」は
不自然と思います。

 「識別が不定」という言い方は広辞苑的には不自然であり、SEMとしては
「解が不定」という事態がありえるということなら、「識別」という用語の
再検討が必要と思います。少なくとも心理学は文系の感じが強いので、
初めて「識別不定」という用語に接した学生は戸惑うと思います。


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