[fpr 3366] 統計分析の多重性

南風原朝和

fprの皆様

補足です。

> 一方,Scheffeの検定は,F検定と無矛盾というのはよいのです
> が,原論文(1953年)のタイトル“A method for judging all 
> contrasts in the analysis of variance”が示すように,対比
> 較(2つの群の平均の比較)に限らず,あらゆる対比(たとえ
> ば,最初の2つの群の平均と残りの1つの群の平均の比較など)
> に対応する方法であり,その分,対比較に限定するとTukeyの方
> 法に比べ,検定力が低くなります。したがって,事後検定とし
> て対比較がなされることが多い現状では,Scheffeの方法は推奨
> しにくい,ということになります。

その意味では,すべての対の比較に対応する方法であるTukeyの
方法も,狙い撃ちで少数の対比に焦点を絞るpre-plannedの対比
分析(contrast analysis)に比べると検定力が低くなります。

全体の網の大きさ(α)が決まっているなら,どこにある差でも
検出できるようにあちこちに網を仕掛けるより,検出したい差が
あるところに集中して網を仕掛けるほうが得策だということです。
その意味では,全体としてのF検定(omnibus F-test)も,狙い
が拡散していて,検定力が低くなるという問題をかかえています。

関連した話題として,最近,学部の学生さんからの相談にこうい
うのがありました。

==
各2水準のA×Bのデザインで,言いたいことは,A1だけでもB1
だけでもほとんど効果はないが,それが組み合わさったA1B1条件
は効果があるということ。分析結果は,両主効果,交互作用効果
とも有意で,単純効果も有意なのだが,なんか言いたいことと
ずれている感じで,しっくりこない。
==

これは,A1B1条件の平均と他の3条件の平均の間の対比を検定す
るのが,研究仮説にもぴったりで,検定力的にも有利になるケース
だと思います。

1要因なら分散分析をして,それからすべての対について事後検
定,2要因なら主効果,交互作用を調べて,それから単純効果,
というワンパターンでなく,リサーチ・クエスチョンに照らし,
また検定力も考慮して柔軟に分析法を選んでいくようなことを,
もう少し統計教育の中に入れていかないといけないのではないか
と考えているところです。


----
南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。