fprの皆様 補足です。 > 一方,Scheffeの検定は,F検定と無矛盾というのはよいのです > が,原論文(1953年)のタイトル“A method for judging all > contrasts in the analysis of variance”が示すように,対比 > 較(2つの群の平均の比較)に限らず,あらゆる対比(たとえ > ば,最初の2つの群の平均と残りの1つの群の平均の比較など) > に対応する方法であり,その分,対比較に限定するとTukeyの方 > 法に比べ,検定力が低くなります。したがって,事後検定とし > て対比較がなされることが多い現状では,Scheffeの方法は推奨 > しにくい,ということになります。 その意味では,すべての対の比較に対応する方法であるTukeyの 方法も,狙い撃ちで少数の対比に焦点を絞るpre-plannedの対比 分析(contrast analysis)に比べると検定力が低くなります。 全体の網の大きさ(α)が決まっているなら,どこにある差でも 検出できるようにあちこちに網を仕掛けるより,検出したい差が あるところに集中して網を仕掛けるほうが得策だということです。 その意味では,全体としてのF検定(omnibus F-test)も,狙い が拡散していて,検定力が低くなるという問題をかかえています。 関連した話題として,最近,学部の学生さんからの相談にこうい うのがありました。 == 各2水準のA×Bのデザインで,言いたいことは,A1だけでもB1 だけでもほとんど効果はないが,それが組み合わさったA1B1条件 は効果があるということ。分析結果は,両主効果,交互作用効果 とも有意で,単純効果も有意なのだが,なんか言いたいことと ずれている感じで,しっくりこない。 == これは,A1B1条件の平均と他の3条件の平均の間の対比を検定す るのが,研究仮説にもぴったりで,検定力的にも有利になるケース だと思います。 1要因なら分散分析をして,それからすべての対について事後検 定,2要因なら主効果,交互作用を調べて,それから単純効果, というワンパターンでなく,リサーチ・クエスチョンに照らし, また検定力も考慮して柔軟に分析法を選んでいくようなことを, もう少し統計教育の中に入れていかないといけないのではないか と考えているところです。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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