fprの皆様 小塩さんからのコメント,ありがとうございます。 > 平均値とSD基準はあくまでもひとつの基準であり,得点分布 > とその項目内容をチェックした上で天井効果・床効果を判断 > すべきだと考えています。 絶対的な基準ではなく,ひとつの基準,という点は重要だと思います。 私は,その「ひとつの基準」として問題がないか,どのような性質が あるのか,という観点から, ・平均がどちらかの極に偏っていない場合も該当することがある。 ・平均が同じであれば,バラツキの大きい項目のほうが該当しやすい。 といった点を挙げました。 > 過去に学生が作った例では,「毎日鏡を携帯する」というものが > ありました。毎日持つ者は持ち,持たない者は持ちません。 > このような項目の場合には,中央付近の回答がほとんどなく, > 1と5に偏ります。 このような項目の場合,両極に集中した回答分布になるとして,それ は天井効果(あるいは床効果)と呼ぶべき現象なのでしょうか。私は 違うような気がします。 あと,これは小塩さんへのコメントではなく一般的な話ですが,上記 のように実質的に2値分布になるような項目に,通常の因子分析(特 に正規分布を仮定した最尤法)を適用するのはまずいとしても,だか らといって,それを尺度に含めるのがまずいということにはならない ので,その点の区別は重要だと思います。上記のような項目も,尺度 を構成する項目として,内的整合性や妥当性の点で大きく貢献してく れる可能性があり,そのことは因子分析とは別に確認することが可能 です。 小塩 真司 さんからの引用: > 皆様 > > 中部大学の小塩です。 > 学生さんが平均値±SD基準を用いたということについては, > もしかすると拙著や拙webサイトの影響もあるかもしれない > と思い(ないかもしれませんが),コメントさせていただこう > と思います。 > > 平均値とSD基準はあくまでもひとつの基準であり,得点分布 > とその項目内容をチェックした上で天井効果・床効果を判断 > すべきだと考えています。査読の際にも,明らかに機械的に > 項目を削っている尺度構成の論文にはその点をコメントする > ようにしてきました。 > > たとえば経験上,5件法で平均が中央に来るにもかかわらず, > 標準偏差が非常に大きな項目というのは,「Yes-No」で答え > るべき項目内容になっていることが多いように見受けられます。 > 過去に学生が作った例では,「毎日鏡を携帯する」というものが > ありました。毎日持つ者は持ち,持たない者は持ちません。 > このような項目の場合には,中央付近の回答がほとんどなく, > 1と5に偏ります。平均とSD基準で引っかかってくる可能性が > 高いのですが,分布を描いて項目内容を見て,「確かに」と > 感じることが多くあります。 > > 逆にこの基準ですと,南風原先生のおっしゃるように,標準偏差が > 非常に小さく弁別力の少ない質問項目が引っかかってこない問題 > があると私も思います。 > > いずれにしましても,「本調査を行う前に10人でも20人でも予備 > 調査をして分布をチェックせよ」ということを,ここ数年は学生 > にもよく言うようにしています。 > > 本題からズレてしまったかもしれませんが,少しだけ考えたことを > 書かせていただきました。失礼いたします。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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