[fpr 3395] 天井効果と床効果

南風原朝和

fprの皆様

村上さんから:

> 天井効果を平均でSDで定義するなんて初めて知りました。しかし、
> ちょっと変ですね。

『心理尺度のつくり方』の著作のある村上さんも,「平均±SD」方式を
ご存知なかったようですが,私が話した学生は私に,「え? 知らない
んですか?」という感じでした。

ネットで調べてみると,この方式を適用して項目を半分ほどにバッサリ
切り捨てている報告もあり,普及,そしてその影響は,相当に進んでいる
ことがわかりました。

小塩さんの

> 査読の際にも,明らかに機械的に項目を削っている尺度構成の論文
> にはその点をコメントするようにしてきました。

という努力にもかかわらず,査読をすりぬけて掲載されているものや,
査読を経ない報告などで,機械的な切り捨てがかなりあるようです。

たとえば,5段階評定の項目で,

 1 2 3 4 4 4 4 5 5 5 

という回答分布だとすると,平均が 3.7,SD が 1.34 で,平均+SD は
5.04 となって 5 を超えます。ネット上では,こういう項目を不良項目
とか危険項目と呼んでいるケースもありますが,たとえば,この項目を
尺度に含めることや,因子分析や主成分分析の対象とすることに,どの
ような問題があるか,と問われたら,私は答えることができません。

機械的に切らない,というのではなく,切る理由がないと思います。

尺度に含めるかどうかは,大西さんからのコメントにもありましたよう
に,尺度の目的によりますし,因子分析や主成分分析の対象にするかど
うかは,この変数と他の変数との相関係数が現実をそれなりに反映して
いるかどうかがポイントであって,その点からも,特に切る理由はない
ように思います。

しかも,多くの場合,あまり大きくない予備調査サンプルでこのような
切り捨てがなされているようなので,統計量の標本変動に対する考慮も
必要です。

ということで,現状に対しては,個々の査読レベルだけではなく,もう
少し抜本的な介入が必要なのではないか,という気がしています。

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南風原朝和  haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp


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