fprの皆様 村上さんから: > 天井効果を平均でSDで定義するなんて初めて知りました。しかし、 > ちょっと変ですね。 『心理尺度のつくり方』の著作のある村上さんも,「平均±SD」方式を ご存知なかったようですが,私が話した学生は私に,「え? 知らない んですか?」という感じでした。 ネットで調べてみると,この方式を適用して項目を半分ほどにバッサリ 切り捨てている報告もあり,普及,そしてその影響は,相当に進んでいる ことがわかりました。 小塩さんの > 査読の際にも,明らかに機械的に項目を削っている尺度構成の論文 > にはその点をコメントするようにしてきました。 という努力にもかかわらず,査読をすりぬけて掲載されているものや, 査読を経ない報告などで,機械的な切り捨てがかなりあるようです。 たとえば,5段階評定の項目で, 1 2 3 4 4 4 4 5 5 5 という回答分布だとすると,平均が 3.7,SD が 1.34 で,平均+SD は 5.04 となって 5 を超えます。ネット上では,こういう項目を不良項目 とか危険項目と呼んでいるケースもありますが,たとえば,この項目を 尺度に含めることや,因子分析や主成分分析の対象とすることに,どの ような問題があるか,と問われたら,私は答えることができません。 機械的に切らない,というのではなく,切る理由がないと思います。 尺度に含めるかどうかは,大西さんからのコメントにもありましたよう に,尺度の目的によりますし,因子分析や主成分分析の対象にするかど うかは,この変数と他の変数との相関係数が現実をそれなりに反映して いるかどうかがポイントであって,その点からも,特に切る理由はない ように思います。 しかも,多くの場合,あまり大きくない予備調査サンプルでこのような 切り捨てがなされているようなので,統計量の標本変動に対する考慮も 必要です。 ということで,現状に対しては,個々の査読レベルだけではなく,もう 少し抜本的な介入が必要なのではないか,という気がしています。 ---- 南風原朝和 haebara (at) p.u-tokyo.ac.jp
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