[fpr 3398] 天井効果と床効果

村上宣寛

> 
> 1.因子分析の前段階としての天井効果・床効果
> 因子分析という分析手法を行う前提条件としては,あえて天井効果や床効果
> がみられる項目を削除する必要はない,という認識でよろしいでしょうか。

私が答えることでもないし、因子分析の専門家ではないですが、ちょっと関係がありそうなので一言。


因子分析は相関係数を前提としている訳だし、天井効果や床効果で相関係数がゆがんでしまう場合には削除すべきだし、「相関係数がゆがむ」という証明がないと削除できないでしょうし。



> 
> 2-1.尺度構成の前段階としての天井効果・床効果(1)
> ただし,因子分析後に項目得点を合計して尺度得点化する場合には,その
> 合計得点化に使用する複数の項目の中で,明らかに少数の偏った得点を示し
> た項目は省いた方が良い場合があると思うのですが(削除する基準は別の
> 問題として),この認識は間違っておりますでしょうか。

このあたり、項目反応理論から考えると、わかりやすいと思うのですが、魚が一匹引っかかりませんね。どこにいるんだろう。

もし、少数の偏った得点ということは難易度の高い項目だと思いますし、それによって削除する理由にはならないのではないですか。削除すべきなのは、識別力の低い項目です。

私がやっていたMMPIを例に考えると、MMPIの項目には正常者集団では非常に偏った、つまりほとんど「いいえ」という項目が含まれています。しかし、特定の精神障害患者の識別には有効ですから、単なる分布の偏りで削除することはできません。まあ、難易度と識別力が両方高い項目なのでしょう。

もちろん、一般論としては偏った分布の項目を削除した方が情報量が増えるので好都合なのです。私も時々学生に指示します。しかし、いつもという訳ではありません。項目内容の関係で残すこともあります。これはケースバイケースで、どんな尺度を作るかに依存します。



> 
> 2-2.尺度構成の前段階としての天井効果・床効果(2)
> もちろん,単に得点分布のみで項目を削除するのではなく,その項目が尺
> 度の中で必要とされるかどうか,意味を考慮する必要があります。
> その点で,分布が偏ったからといってバッサリと項目を削除してしまうこ
> とは,内容的妥当性の観点から望ましくないと考えます。
> 項目の内容・表現とある程度の得点分布の形状は,(論文に記載するかど
> うかは別として)予備調査段階で十分に検討すべき問題であると思ってお
> ります。
> 
> 2-3.尺度構成の前段階としての天井効果・床効果(2)
> そもそも分布の偏りを問題とするのは心理的な構成概念を量的に把握しよう
> とする場合のことです。心理的な構成概念であれば,ある程度質問上の
> (偏らない)工夫は可能になると考えられるからです。
> 行動評定や印象評定のような場合には回答が偏ることも十分に想定できます。
> したがって,天井効果・床効果を認めない・認めるという問題は,測定しよ
> うとしている概念(行動・頻度)が何であるかに規定される問題である,と
> いう認識で良いでしょうか。
> 
> 3.平均値±SDを天井効果・床効果の指標とすることが可能か
> これまでの議論からしますと,これは「できない」もしくは「困難である」
> ということになりますでしょうか。この点につきましては,私自身もある範
> 囲では可能ではないか(少なくとも分布をチェックする前段階としては可能
> ではないか)と思い込んでいた部分がございますので,認識を改める必要が
> あると感じております。

私はこの問題は初めて知ったわけですが、南風原さんのデータではできないことが明らかです。意地悪なデータで、ちょっと数値を平行移動しただけですから。これは人工的なデータで普通のデータではないという論理もありますが、普通に考えて「困難」と考えた方が良いのではないですか。

分布をチェックするのであれば、視覚的なプロットをやれば良いわけです。EDA 探索的データ解析というアプローチがありましたね。ソフトはいろいろあると思います。平均値±SDを見るより、健全だと思います。私はソフトを持っていないので、学生には自作の頻度分析プログラムを分析の前段階で使わせています。



> 
> 以上です。
> 長くなってしまいましたが,普段行っている研究にも直結する問題ですので,
> ぜひ確認させていただきたく思っております。
> どうぞよろしくお願い申し上げます。
> 
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> OSHIO, Atsushi, Ph.D
> Associate Professor,
> Department of Psychology, 
> Chubu University
> E-mail: aoshio (at) isc.chubu.ac.jp
> URL:    http://psy.isc.chubu.ac.jp/~oshiolab/
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> OSHIO, Atsushi, Ph.D
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                                           〒930-8555 富山市五福3190
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