[fpr 3548] 説明変数の共分散比

ISHII Hidetoki

fprの皆様

 石井@名大教育です.

 共分散比というと,とくに入試関係者は,合計得点に対する各テストの
寄与を表す指標の1つと思い浮かべると思います.回帰分析では,外れ値
の診断に使う指標の1つにcovariance ratio というものがありますが,
ここでは,前者の共分散比のことに関しての話題です.

 合計得点に含まれるあるテストの共分散比は,「合計得点の分散に対する,
当該テストと合計得点の共分散の割合」で定義され,当該テストを従属変数,
合計得点を独立変数とした回帰モデルの回帰係数の値に一致します(菊地,
前川,柳井,199など).そして,合計得点に含まれるすべてのテストの共分
散比を合計すると1になります.それゆえ,合計得点に対する各テストの寄与
を表す指標の1つと考えられています.

 回帰モデル,Y = b1 X1 + b2 X2 + … + bp Xp + Ey において,Yを,
説明変数X1,X2,…,Xp および誤差 Ey の,重みb1,b2,…,bp および 1
の合計点と考えると,ある説明変数 Xj の共分散比cjは,bjと,
Xj = aj Y + Ej の回帰係数 aj を用いて,cj = aj bj (当該説明変数にゆか
りのある2つの回帰係数の積)と計算されます.
 そして,Σ_{j=1}^{p} cj = R^2 (X'sからYを予測したときの分散説明率)
となります.さらに誤差 Ey の共分散比も加えたら,すべての説明変数につ
いて合計したことになりますから,共分散比の合計は1になります.

 cj = aj bj は,回帰分析において,従属変数の予測における各説明変数の
寄与の割合を考える1つの指標になると思いますが,あまり聞かないので,こ
こに書いてみました.

 なお,「ΔR^2=ある説明変数を抜いたときの決定係数の差分」は,それぞ
れの説明変数群で回帰係数を推定しますから,cjとΔR^2は異なります(と思
います).



前川眞一・菊地賢一・柳井晴夫(1999)合計点への寄与について.柳井晴夫・
前川眞一編,大学入試データの解析−理論と応用,現代数学社,pp.75-87.


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石井秀宗(Hidetoki Ishii)

〒464-8601 名古屋市千種区不老町
名古屋大学 大学院教育発達科学研究科
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