[fpr 47] GPower and HAEBARA's article

石田翼

 石田@東北大%心理を忘れた心理屋です.

私の記憶が確かならば,
Kayoko KURITA 氏は
「[fpr 46] GPower」においてこう述べたはずだ.

> また,近似式はCohenのStatistical Power Analysis(1988)に基づいたものだ
> そうです。

 こういった計算に使われた式はgpowerのドイツ語版に説明がある,とreadmeに
ありましたね.とりあえず知りたい,という方はこれを持ってくると良いでしょ
う.場所は先日紹介したところと同じで,ファイル名はgpower2d.exeです.

>   Goldstein, R., 1989, Power and sample size via MS/PC-DOS 
>   computers. American Statistician, 43, 253-260
> は様々な検定力分析のためのプログラムを紹介してある論文なのですが,その
> 中でt検定8例について実際に検定力を計算した結果の比較の表があります。
> GPowerによる計算を実際に行いその表との比較をしてみましたが,優良なプロ
> グラムの数値によく一致していました。

 実はこれは私もやってみました.で,ちょっとおかしいなと思ったのがp.259
のTable 3にあるstrandard deviationですけど,これは実は分散じゃないですか
ね>栗田さん.

>  尚,GPowerの使い方(for DOS/V)についてA4で10頁ほどにまとめたものをつ
> くりました。もし,興味をお持ちの方がいらっしゃいましたらメイルにてご連
> 絡ください。

 これは面白そうなので,ぜひお願いします.

 話は少し変わって,先日南風原さんの例の論文を読み終わりまして,非常に面
白かったです.Cohenが長年にわたる検定力普及の努力を振り返って「変化は徐
々にしか起こらない」と言ったというのは,泣かせますね.
 しかし,1960年代に興ったいわゆる認知科学革命が今や一世を風靡しているの
を考えると,1940年代から興っていた有意性検定批判運動(と言っていいのかな
?)というのがこれだけ広まっていないというのは,なにか戦略を間違えたかな
,という気もします.
 その広まらなかった要因の一つとして,「検定力を算出するような統計パッケ
ージがなかった」というのもあるのではないでしょうか.例えば世に広く使われ
ているSASやらSPSSといったパッケージが,当然のようにデフォルトで検定力も
算出してくれていれば,もうちょっと広がっていたのでは,と思います.
 心理学者の性質として(いや,統計パッケージを使っている人全ての性質か?
),統計パッケージが出した数値がαでありωであると思っていますから(実際
はαしか出さないのにね),デフォルトで検定力が算出されていればまた違った
のではとか思うのですが.
 Cohen自身もそう思ったのか,Borensteinらとともに検定力を算出するプログ
ラムを作成・発売するようです.
 そういった文脈の上では,検定力を算出するプログラム(つまりgpowerね)が
無料で手には入ってしまうというのは実はすごくエポックメイキングなことでは
ないか,と思うのです.
 ただその場合の問題となる要因は,ネットワークに繋がっている心理学者が日
本ではそれほど多くないことじゃないでしょうか.

----
東北大学大学院情報科学研究科     :所属部署名の
人間社会情報科学専攻         :長さとご大層さでは
人間情報学大講座           :日本有数
認知心理情報学講座
          石田 翼(i22940 (at) cctu.cc.tohoku.ac.jp
               GHE04441 (at) niftyserve.or.jp)

スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。