[fpr 102] 59th JPA WS

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

このメーリングリストを母体として開催された先日の日本心理学会のワークシ
ョップで,話題提供の際に使用したOHPの原稿(当日,資料として配付したもの)
を,ほぼそのままの形で掲載しておきます。<1><2>・・・はOHPの頁です
が,今後の参照用に付けておきました。

当日は,<6>から<11>までを中心に話題提供を行い,その後,指定討論
者の服部さんや,その他の参加者の方との討論の中で,その他の部分にも言及
するという流れでした。

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<1>
日本心理学会第59回大会ワークショップ 1995年10月12日
心理学研究の自己評価(2)統計的検定は心理学研究に何をもたらしたか
東京大学教育学部 南風原朝和

<2>
統計的検定の主要な理論
1)有意性検定の理論(Fisher)
 対立仮説を設定することなく,データから算出されるp値を用いた事後的な
 解釈によって,帰無仮説の信憑性を評価
2)仮説検定の理論(Neyman & Pearson)
 対立仮説を明示し,標本抽出において生じる2種類の誤りの確率を事前に制
 御した上で,どの仮説を採択するかを決定

<3>
【問題】統計的検定は心理学研究に何をもたらしたか
問題の2通りの解釈
【1】統計的検定の導入によって,研究の進め方にどういう変化が起こったか
【2】統計的検定は,心理学の発展にどのような貢献をしたか

<4>
【1】統計的検定の導入によって,研究の進め方にどういう変化が起こったか
        Inference Revolution 1940-1955
1)データ解析の自動化・機械化(・硬直化・無思考化)
      「○○検定にかける」「SASをまわす」「データ処理」
2)群間比較法の流行
    検定の普及との相乗効果

<5>
3)研究結果の2値化
   「有意性」以外の情報の無視
4)論文採択の条件としての「有意性」
   APA Publication Manual における検定結果の記述法の詳細な解説
      Skinner や Luce の抵抗 新ジャーナルの創刊

<6>
【2】統計的検定は,心理学の発展にどのような貢献をしたか
【2a】統計的検定は心理学研究に何をもたらしうるか
【2b】統計的検定によって何が得られるか
     検定結果のもつ意味を正しく限定する作業
      研究の中で繰り返し行っていることの意味の追求
     「心理学研究の自己評価」の一環
   誤用論を越えて

<7>
【2b】統計的検定によって何が得られるか
教科書的な回答:
1)偶然によって得られる程度の差異を,意味があるかのように主張する誤り
    の回避
2)標本で得られた結果が,その標本から母集団へ一般化できるか否かのチェ
  ック(昨年の日心シンポ話題提供「一般化可能性の評価と有意性検定」)
 1)の意味の検討

<8>
a)確率モデルを当てはめるのは適切か
b)偶然によって得られる程度の差異は無意味か
a)について
 実際のデータ収集の手続きは?
   「便宜的」「偶然的」標本は無作為標本ではない
  「仮想的な無限母集団」の概念の問題
 実験手続き自体への確率の導入
   randomization test

<9>
 被験者選択の確率的変動と被験者内の確率的変動
   後者は特定の集団,特定の個人にも適用可能(例:テスト理論)
b)偶然によって得られる程度の差異は無意味か
   検定での「意味」の定義
      2種類の確率的変動との関係(議論の実例)
      統計的有意性と実用的有意性

<10>
検定力分析について
1)意義
   標本の大きさの事前の検討による検定結果の恣意性の減少
   「有意でない」結果の解釈
2)限界
   結局は2値的判断への固執
   データ収集の手続きによっては無意味

<11>
無作為標本について
1)検定・推定の前提としての重要性
2)関心のある母集団は単一ではない
    無作為標本でも特徴記述が必要
3)代表的標本との混同
    研究にとってどちらが重要か
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                                  南風原朝和  (はえばら ともかず)
                                  tomokazu (at) tansei.cc.u-tokyo.ac.jp
                              〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学教育学部
                              TEL: 03-5802-3350     FAX 03-3813-8807
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