[fpr 113] mode factor analysis

豊田秀樹

豊田@立教社会です.

Keizo Hori <hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp> さんは書きました:
#>とりあえずの日本語は
#>柳井ほか『因子分析−その理論と方法−』朝倉書店 1990 7章
#>どこかほかでも紹介を見たようにも思うが忘れた。

柳井「多変量データ解析法」朝倉書店 1994 8章もあります.

#>(3)実際にsd法をtuckerで分析してみたのですが、どうもきれいな結果がで
#>なかった。2相での分析はほぼ予想通りの結果がでていたので、3相は発表し
#>ないままで捨てました。村上先生ごめんなさい。そのとき、思ったはかなりき
#>れいなデータでないと3相にむかないのではないかということです。もうすこ
#>し、かっこよくいうと、2相のほうが頑健な分析だろうと思ったのでした。

2相のデータは多相データと比較すると単純なので探索的因子分析法のように
汎用のモデルが,そこそこに有効な情報をじばしば提供してくれますが,多相
データの相関分析は研究目的にあわせて,データごとにモデル構成する必要が
あるのだと私は思います(この記事の下のほうで具体的に言及します)

#>(4)lisrel や calis で3相因子分析できたのですか。
#>spss社からでているLISREL 7 ではTucker への言及とか、索引に 3 mode とい
#>うのはないから、おそらくできない。calis ならできるのでしょうか。

マニュアルにかいてないから,おそらくできないという判断は,一般的に必ずし
も適切とはいえません.特に,共分散構造モデルは,データの性質にあわせ
た固有のモデルを構成するためのツールですから構成可能なモデルをマニュア
ルにすべて載せるのは無理です.LISRELやCALISに限らずEQSでもAMOSでも,どれでも
分析できます.parafacとtucker3の共分散構造は,それぞれ前掲柳井1990で
(I(直積)L)UPU’(I(直積)L)’+D               (7.24)
(A(直積)B)CPC’(A(直積)B)’+D               (7.68)
のように確認できます(実際の式はギリシャ文字を含んでます).
parafacが共分散構造モデルのソフトで表現できることは明白ですし,
tucker3のほうは関数の制約のオプションのついた最近のソフトなら直接表現でき
ます.古いバージョンのソフトしか手元になくても
(A(直積)B)=(A(直積)I)(I(直積)B)
という直積の公式を使えば表現できます.識別問題は
1.データの性質にあわせて固定母数を入れる
2.適当に収束させて必要に応じて回転する
3.1因子づつ求めて1つづつ固定母数に指定する
などの方法で解決します.共分散構造分析ではGFIなどの適合度が計算されますが
解釈がうまくいかないのは,この値が低い場合である可能性が高いと思います.

Takashi TANIGUCHI <takashi (at) mbox.kyoto-inet.or.jp> さんは書きました:
>谷口@大院大です。学会後、みなさんひと休みのようですね(^^)
>ありがとうございます。なにか適当な参考図書はありますでしょうか?
>できればプログラムのサンプルが載っているようなのがありがたいのですが。
>自分でも探してはいるのですが。

上述しましたように,共分散構造モデルはデータの性質と研究目的にあわせて
手作りのモデルをそのつど作りますので,他の多くの手法のように変数名だけ
代えれば結果が出てくるようなプログラムサンプルはありません.モデルの
作り方の原理やその結果としての,サンプルプログラムは谷口先生が言及して
いらした拙著があるていど掲載しています.

>まず、感情的な性質が異なるような5曲について、50項目の評定を行ってもら
>いました(欠損値なしのデータ=183人分)。このデータを先に書いたように
>因子分析し、5因子に負荷の高い24項目を抽出しました。その後、別の被験者
>によってこの24項目からなる尺度の信頼性、妥当性などを検討しました。
>なお、尺度の作成についての詳細は、
> 谷口高士 1995 音楽作品の感情価測定尺度の作成及び多面的感情状態尺度
>  との関連の検討, 心理学研究, 65, 463-470.
>に出ております。

昨日の日曜日に読まさせていただきました.読んでいるうちにワクワクするような
興味ぶかい論文でした.このため以下ではかえって辛口の指摘をいたしますが
,研究意義のゆえと解釈してください.

>目的は、音楽作品の感情的な側面に注目して曲を分類し、感情操作、環境操作、
>背景音楽などの実験に利用するための音楽材料プールを作ることです。
>単語の連想価表のような資料を作りたいわけです。
>質問は、この90曲のデータの分析をどうしたらよいか、ということです。

ということは,たとえば「作品1は親和的で,弱くて,軽い」というようなこと
を確認したい,逆にいうと「半分くらいのひとは作品1を親和的だと評定し,別の半
分は非親和的だと評定する」のでは困る,つまり「作品の(個人差にあまり影響
されない)性質を記述,分類をする」ことが目的ですね.

もしそうだとすると上記論文の信頼性の検討方法は必ずしも適切とはいえません.
なぜならば,内的整合性が高いということは,個人内で下位項目間の反応の
傾向が一致しているということを主として確認しており,個人間(作品内)では
「半分くらいのひとは作品1を親和的だと評定し,別の半分は非親和的だと
評定している」ような測定値の分散が大きくなるような状況でアルフア係数は
高くなるからです(作品ごとに求めているので更に悲観的です).

また再検査信頼性が高いということは,個人内の2時点で尺度得点が安定している
ことを主として確認しており,個人間(作品内)では
「半分くらいのひとは作品1を親和的だと評定し,別の半分は非親和的だと
評定している」ような測定値の分散が大きくなるような状況で再検査信頼性は
高くなるからです(こちらは作品間分散は考慮されていますが,,,).

たとえば尺度「荘重」はtable1の平均と標準偏差の状態から考えて
,信頼性係数の値とは無関係に,目的をほとんど達していないとおもわれます.
谷口先生が3相の分析を思い立ったのは,上記のような2相のデータを分析する
ことによる信頼性の限界,あるいは矛盾を感じられたからではないでしょうか.

研究目的から考えて,ここでは作品間の分散が大きく作品内の分散が小さいこと
がもっとも重要ですから,とりあえず尺度毎に作品を名義変数とする相関比を確認
するのが尺度の信頼性の直感的な印象にもっとも近いと考察方法であると思われます

本格的に尺度の性質を考察するのであれば,
個人内で下位項目間の反応の傾向が一致し,個人内の2時
点で尺度得点が安定し,作品間の分散が大きく作品内の分散が小さいこと等
をそれぞれ個別に評価することが重要であり,そのためには一般化可能性理論
(池田央,現代テスト理論,朝倉書店が本格的です.入門用には拙著
違いを見抜く統計学,講談者があります)が有効です.

さらに現実には,個人間で印象の共通した(その意味で信頼性の高い)作品と
個人間で印象ばらばらの作品(信頼性の低い)の違いがあり(音楽材料と
しては前者のみプールに残します),その違いも心理学的に非常に興味深
いテーマです.しかしこの興味は各相に弱平行測定を仮定する(係数はみ
な1である)一般化可能性理論では不十分であり,独自の共分散構造モデルを
構成することが望まれます.

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Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor,      Department of Sociology
TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp  3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan                                  
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