豊田@立教社会です 4百枚近い答案の採点が,昨晩,1段落し(終ってはいない!昨日など試験 が終った直後に卒業があやぶまれる学生に「囲まれ」てしまい,善後策の協 議が延々続いた),現在,心身ともにヘロへろになっています.まだまだ仕 事は山積みなのですが,きりがないので気晴らしにメールします. "服部 環 " <GAC01056 (at) niftyserve.or.jp> さんは書きました: > 宇都宮大学の服部 環です。アップが遅くなり、失礼しました。 > 昨年のワークショップで配布した資料について南風原さんのご指摘があ >りました。余計な資料だったのですが、言いたかったのは(どうでもいい >でしょ、という人もいるのですが)、以下のようなことでした。 >・主成分分析は主成分分析のままで、これを無理して因子分析の主成分解 >と言わなくてもよいのではないか。 賛成です.呼びかたの流儀ですから本質的な問題では有りませんが,無意味に 用語をふやすのはよくないですよね. >・最近の日心、教心の論文を見ると主因子法がほとんどですが、最小自乗 >法は最小化基準式が因子分析の理念を反映しているのでわかりやすい。し >かも、(高価な)統計パッケージの最小自乗法はそれほど多くの反復計算 >をしなくても、推定値が得られる。もちろん、ダメなときもありますが。 「相関行列の対角要素に共通性の推定値を入れて固有値問題を解く」方法 は,完全に時代的使命を終えています.この方法は計算機が発展していな かった時代の便法という意味以外の意味は今日ありません.心研や教心研 でもよく見ますけど,項目の分類が変わるほど解が異なることもあります から,もうこの方法からは卒業する時期です. 服部先生は上記方法を,主因子法と呼んでいらっしゃるようですが,たと えば最尤法の(一般化最小二乗法の)主因子解,バリマックス解というよう に,主因子という名前は因子空間の1つの基底をあらわす言葉として使用 されているように思うのですが?いかがでしょう.そうでないとこの言葉が もったいないと思います >・主因子法でも、共通性を<あきれるほど十分に>反復推定すれば最小自 >乗推定値と一致するはずですが、私の持っているソフトウェアのデフォル >トでは、ほとんどそれが期待できない。解が収束する前に計算を止めてし >まうことが多い。つまり、最小自乗法の推定値と一致しないし、主因子法 >の解にもなっていない。 これは服部先生のソフトの(個人的)問題ですよね.それより 最小2乗解を御薦めのようですが,最小2乗解が尺度不変でない (変数に定数をかけて,共分散行列を作り,因子分析をし,因子負荷行列を 当該定数でわっても,もとに戻らない)という性質をどのように,評価なさ いますか.間隔尺度を多く扱う分野で,たまたま選んだスケールに 分析結果が本質的な影響を受けるのは,分析結果として意味があるのでしょうか? 項目の分類にまで影響することもあり,私は問題であるとおもいます. 一般化最小2乗法なら,分布の仮定もないし,尺度不変なのですが,,, こんなことをいうと,現在の心理学会の研究の定石にまっこうから立ちはだかることに なってしまいます.自分でもひとに薦める結論はでていません,私自身は研究に最尤解 を使います.分布の仮定はありますが,解そのものは相当に頑健であることが 数理統計学者たちによって確認されているからです.ブラウンとかシャピロ とか,日本では狩野先生とか天才がひしめいている分野です. >・共通性の初期推定値は適当に与えていることが多いと思うのですが、初 >期推定値の選択を誤ると正しく推定値を得られないことがある。 わたしの経験では,以下のようなことがいえます. モデルとデータが適合していれば(例えばGFIが高ければ) 初期推定値に余り影響しないようです.モデルとデータが適合していないのに (たとえばGFIが低い)因子分析を実行する場合は初期値に依存することが 多いようです(得られた解もあてになりません). 心理学研究をする際に,こういう場合は因子分析をする(していいんだ) という無批判にうけいれられるパターンがあるようですが,手元の相関行列は,もし かしたら因子分析モデルがあてはまらない相関行列なのではないか?という 視点が,現在,完全に見落とされています.因子分析で論文を書く際には GFI等の指標を計算して,因子分析を行ったことの妥当性を確認しても良いので はないでしょうか.少なくとも,(たとえば心理テストから計算された)相関行列 には(2,3因子のあるいあhそれ以上の)因子分析モデルがあてはまらまい可能性もあ るのだという認識は早急に確立すべきです.それは累積寄与率より重要な視点です. >・回転後の因子の寄与(因子パターン行列の縦の自乗和)を固有値と書い >ている論文がありますが、あれは<固有値>とは違うのではないか。原因 >は統計パッケージか。 これは,私自身も見るたびにいっていたのですが,もう直らないのであきらめて います. どこがルーツかは解りません,,,, >・斜交解の因子構造行列として掲載している数値を見ると、どうも因子パ >ターン行列のようである。(単なる勘違いかな。) どなたの勘違いですか?すくなくとも服部先生の 勘違いではないとおもいます.ご指摘の事例は最近ふえています. 構造とパタンは別物ですが,直交解では両者が一致するので (まとめて負荷と呼ぶばあいもあり)どちらで呼んでも 問題ないということから,斜交解でも同じではないかと勘違いして あまり注意しないで使用されているものと思われます. 斜交解が心理学の研究に使用されはじめてから日が浅いので いま声を大にしていえば(上記固有値の問題と違って) 正しい認識が広がるかもしれません. 追伸:ワークショップの時間帯のダブリなんて気にしないで じゃんじゃん申し込んでください.いくらでも調整します #気晴らしになりました.よーし午後からまた採点だ,,あーあ ---------------------------------------------------------------------- Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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