宇都宮大学の服部 環です. 引用の仕方が下手で本文が長くなりました。すみません。 ------------------------------------------------------ (豊田さん) >4百枚近い答案の採点が,昨晩,1段落し(終ってはいない!昨日など試験 お疲れさまでした.私も,期末試験のたびに1000枚弱の答案を採点します.以前 は,3〜4日間,朝から夕方まで採点をしていましたが,昨年は2日間で採点できるよ うになりました.これも鍛錬の賜物です.今年はさらに研鑽を積み,一日半を目指しま す. (豊田さん) >服部先生は上記方法を,主因子法と呼んでいらっしゃるようですが,たと >えば最尤法の(一般化最小二乗法の)主因子解,バリマックス解というよう >に,主因子という名前は因子空間の1つの基底をあらわす言葉として使用 >されているように思うのですが?いかがでしょう.そうでないとこの言葉が >もったいないと思います 「因子空間の1つの基底をあらわす言葉として使用されている」と思いますし,最尤 法(一般化最小二乗法)の主因子解,最尤法(一般化最小自乗法)のバリマックス解と いう言い方は明快だと思います.でも,「主因子分析,正準因子分析という用語は,共 通因子の特徴づけという意味の他に,しばしば未知母数の推定法もさす(丘本,因子分 析の基礎,日科技連,19頁)」ようになってきている(以前から?)ようです.むし ろ,日常的には推定法の1つとして主因子法という名前を使っている場面が多いと思い まして(多くない?),普段,相関行列の対角要素に共通性の推定値を入れて固有値問 題を*一度だけ*解く」方法を”共通性を反復推定しない主因子法”,そして,共通性 の推定値が安定するまで「相関行列の対角要素に共通性の推定値を入れて固有値問題を *繰り返し*解く」方法(Thomsonの反復分解法です)を”共通性を反復推定する主因 子法”と呼ぶようにし ています.まだ,この使い方は一般的ではありませんか. (先生はやめて下さいヨ.) (豊田さん) >これは服部先生のソフトの(個人的)問題ですよね.それより 確かにそうですね.いじわるをして,簡単には収束しないデータを入力して遊んでみ たのです.利用した(計算をお願いした)のはSAS,SPSS for Windo ws,HALBAU,SOLO,STATISTICAです.でも,「相関行列の対角 要素に共通性の推定値を入れて固有値問題を*繰り返し*解く」方法は,たぶん基本的 アルゴリズムは同じでしょうから,反復回数の最大値のデフォルト値は少ないように思 います.どうですか.また,収束基準値が大きすぎる(しかも変更できない)ソフトも あるようです. (豊田さん) >最小2乗解を御薦めのようですが,最小2乗解が尺度不変でない >(変数に定数をかけて,共分散行列を作り,因子分析をし,因子負荷行列を >当該定数でわっても,もとに戻らない)という性質をどのように,評価なさ >いますか.間隔尺度を多く扱う分野で,たまたま選んだスケールに >分析結果が本質的な影響を受けるのは,分析結果として意味があるのでしょうか? >項目の分類にまで影響することもあり,私は問題であるとおもいます. >一般化最小2乗法なら,分布の仮定もないし,尺度不変なのですが,,, >こんなことをいうと,現在の心理学会の研究の定石にまっこうから立ちはだかること に>なってしまいます.自分でもひとに薦める結論はでていません,私自身は研究に最 尤解>を使います.分布の仮定はありますが,解そのものは相当に頑健であることが ソフトをデフォルトのままで使うのだったら,2つの主因子法(例えば,SASのPR INとPRINIT)よりは最小自乗法のほうがよいと思っている,ということです. 自分が因子分析を行うきは最尤法を利用しています.ただ,これは尺度不変の問題も ありますが,因子数を決めるための情報を選るのに都合がよいという理由もあります. そういえば,昨年の日心で萩生田さんが新しい基準値を提案されていました. 以上は探索的な場合ですが,確認的な因子分析のときは一般化最小自乗法か最尤法を 使います.分析データは分散共分散行列です. 昨年,教科書の分担執筆原稿を書いたのですが,探索的な因子分析の事例には最小自 乗法を使いました.ただ,説明に使った計算手順は,もっとよいアルゴリズムがあり, 市販のソフトはそれを使っていることを*はっきりと*ことわった上で,Thomsonの反 復解法 を使いました.計算手順がわった,という実感を持ってもらうことが大切と考えた訳で す.十分に反復すれば最小自乗法の推定値と一致するのですから,許して下さい(許さ れない?). 確認的な因子分析の事例には一般化最小自乗法を使いました.一般化最小自乗法を使 ったのは,それまでの章に最小自乗法が出てきているのと,一般化最小自乗法の基準式 が最尤推定法の基準式よりも*見た目に*わかりやすいと思ったからです. (豊田さん) >>・共通性の初期推定値は適当に与えていることが多いと思うのですが、初 >>期推定値の選択を誤ると正しく推定値を得られないことがある。 > >モデルとデータが適合していれば(例えばGFIが高ければ) >初期推定値に余り影響しないようです.モデルとデータが適合していないのに なるほど,勉強になりました. 余談ですが,共通性の推定問題はまったく理論的な研究,と思っていたのですが,あ る初期値はPRINITではうまく収束するけど,ULSではだめ,また,別の初期値はPRINIT はだ めだけど,ULSではうまく収束する,ということを経験し,実用上も大事な研究なんだ と いうことを感じました. (豊田さん) >心理学研究をする際に,こういう場合は因子分析をする(していいんだ) >という無批判にうけいれられるパターンがあるようですが,手元の相関行列は,もし >かしたら因子分析モデルがあてはまらない相関行列なのではないか?という >視点が,現在,完全に見落とされています.因子分析で論文を書く際には >GFI等の指標を計算して,因子分析を行ったことの妥当性を確認しても良いので >はないでしょうか.少なくとも,(たとえば心理テストから計算された)相関行列 探索的な因子分析でも適合度指標を自動的に計算してくれると楽ですね. (豊田さん) >には(2,3因子のあるいあhそれ以上の)因子分析モデルがあてはまらまい可能性 も>あるのだという認識は早急に確立すべきです.それは累積寄与率より重要な視点で す. そうですね.私は,10個くらいの変数で,どうやっても単純構造が得られない経験 をしたことがありました. (豊田さん) >>・回転後の因子の寄与(因子パターン行列の縦の自乗和)を固有値と書い >>ている論文がありますが、あれは<固有値>とは違うのではないか。原因 >>は統計パッケージか。 > >これは,私自身も見るたびにいっていたのですが,もう直らないのであきらめて 何度も見かけると,行列の固有値とは別に,”因子パターン行列の縦の自乗和を固有 値と呼ぶ”のかもしれない,などと思ったことがありました. (豊田さん) >>・斜交解の因子構造行列として掲載している数値を見ると、どうも因子パ >>ターン行列のようである。(単なる勘違いかな。) > >どなたの勘違いですか?すくなくとも服部先生の >勘違いではないとおもいます.ご指摘の事例は最近ふえています. 著者が勘違いしているのかな,と思ったのです.お名前はちょっと,,,. (松田さん) >>>・主因子法でも、共通性を<あきれるほど十分に>反復推定すれば最小自 >>>乗推定値と一致するはずですが、私の持っているソフトウェアのデフォル >>>トでは、ほとんどそれが期待できない。解が収束する前に計算を止めてし >>>まうことが多い。つまり、最小自乗法の推定値と一致しないし、主因子法 >>>の解にもなっていない。 > > というか、これは因子数が既知の場合の話ですよね。因子数が > 未知の場合だと、反復計算だけでは苦しいです。 「因子数が既知の場合」はどういう場合を指すのでしょうか.分析者が前もって(計 算時に)1個,2個,3個という具合に指定することを指すのでしょうか. (松田さん) > だって、人の論文を読んでいると、因子の推定が終わったら > 因子パターンの値が高いものだけ集めて、粗点を合計すると > いう人が余りにも多いような気がして残念です。 > だったら、因子分析なんかしなきゃいいのにと思ってしまう > くらいです。 (a1)因子得点の推定はその標本だけでよい場合と(a2)得られた尺度(因子パターンが 高い項目を集めたもの)を将来的にも別の標本へ使いたい場合,(b1)因子得点あるいは 尺度得点に基づいて統計的検定をして結果を一般化したい場合と(b2)統計的検定は不要 でその標本の記述だけで終わればよい場合,を考えたとき,a1-b1(研究論文で頻繁に 利用され る事例に相当するか),a1-b2(実態調査),a2-b1(追試),a2-b2(心理検査の作成 と その利用にあたるか)の4通りが考えられますが,組み合わせによって因子得点を推定 したほうがよいときと,素点の合計でもよいときと,あるいはどちらでもよいとき(こ れはないか?)があるように思いますが,いかがでしょうか.
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