[fpr 164] 質問

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

豊田@立教社会さん wrote:

>> 私は,誤用とは「統計学的な仮定を逸脱し,しかも「そのことが原因で」実質科学的に
>> 間違った主張がなされている」状態であると考えます.
>> そう考えると,1つの論文が誤用を侵しているか否かの判断を
>> するだけで,相当のエネルギーが必要です.






>> 私は学生時代に,試験期間の勉強しなくてはいけない時に限って,小説を
>> 読んでしまっていたのですが,立場はかわって採点しなくてはいけない
>> ときに限ってメールを書いている,,,
>> 
>> "桑田 繁 " <GGC01507 (at) niftyserve.or.jp> さんは書きました:
>> > そこで、質問なのですが、最初にあげた未発表論文では、用いた
>> >検定の種類について調査されています。これは、まったく著者1人
>> >だけによる分類・判断の作業です。このような調査データの場合、
>> >そこに分類・判断ミスや一種のバイアスが存在する可能性があると
>> >思うのですが、いかがでしょうか? 特に、著者の場合、その学会
>> >のレベルを低く見る傾向があり、これがバイアスとして判断に影響
>> >する可能性が考えられます。 
>> 
>> 検定の種類についての分類であれば,ある程度,統計手法の全体的な体系を
>> 学んだ方であれば,誤分類はほとんどないと思われます.また個々の論文自
>> 体に検定の名称が書いてあるのが普通です.
>> それより,前の論文で,誤用(と思われる)論文の展望をしていることには
>> 危険な雰囲気を感じます.
>> 論文で使用されている統計手法の使用法が誤用であるか,否か
>> という問題は1つの論文を取り上げるほうが多くの議論を必要とします.
>> 一見逆説の様にも聞こえるかもしれませんが,事実です.
>> たとえば,調査法の教科書には
>> 「無作為抽出を実施することにより標本誤差は評価できるが,非標本誤差は
>> 評価できないことが多い」
>> というようなことが書かれていますが,
>> このルールを機械的に適用したら,知り会いの教室にたのんでデータをとる
>> 習慣のある心理学の研究で発表され,検定を利用した
>> ほとんどの研究は即刻「誤用」ということになります.
>> 非標本誤差の問題を持ち出したら新聞社でおこなわれている調査も
>> 「誤用」と強弁することすら可能です.
>> そういう機械的なチェックリストの適用は,実質科学的に
>> 何も産み出さないばかりか,周囲から感情的な反発をくらって
>> いいことは1つもありません.

>> 
>> 考えてみるとfpr自体も,気を付けないと
>> 「心血そそいで産み出した論文を1言のもとにきって捨てる集団」
>> という印象を周囲に与える心配もないわけではありませんね.
>> そうならないためには指摘する際のガイドラインみたいなものが必要
>> になるかもしれません.
>> 
>> 1例をあげますと...
>> F00975 (at) sinet.ad.jp さんは書きました:
>> >1例をあげますと、私のところでは、例年、信頼性係数について
>> >誤解している卒論生が多く、奇妙に思っておりましたが、原因は、
>> >新版SPSSx(三宅他、東洋経済新報社)の第3巻196頁の記述
>> >にあることが最近わかりました。
>> (以下具体的な記述はありません)
>> この長谷川先生の指摘のしかたは,望ましくないとおもいます.
>> この書き方は個人をほとんど(完全に?)特定していますが,
>> 批判の内容が書かれていないので学問的指摘にはなっておらず結果的に
>> 個人の名誉を不当に毀損しているのみではないでしょうか.
>> ここまで書くのであればとことん議論に応じる(自らの時間を費やす)覚悟で
>> どのような記述の間違いが,どのような弊害をもたらしているかを明確に書いて
>> むしろ積極的に著者に伝えるべきではないでしょうか.
>> 私が著者であれば反論しないだろうし,
>> 私自身もこの著者のような状況におかれ,反論できなかった
>> くやしい思い出があるのでここに書いてみました.
>> 
>> HAEBARA (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp さんは書きました:
>> >南風原@東大教育心理です。
>> >>> 最小2乗解を御薦めのようですが,最小2乗解が尺度不変でない
>> >>> (変数に定数をかけて,共分散行列を作り,因子分析をし,因子負荷行列を
>> >>> 当該定数でわっても,もとに戻らない)という性質をどのように,評価なさ
>> >>> いますか.
>> >
>> >という問題が残るわけですね。共分散行列の因子分析ではなく,相関行列の因子分析
>> >だから良い,というのではダメですか?
>> 
>> たとえば,動機づけ(私の関心のある分野なので例に利用します)研究の分野では
>> 100点満点の期末試験と5件法の帰属尺度と60項目の和の心理検査を同時に変数として
>> 利用することがあります.このような変数の取りかたをする分野は心理学の中で特殊
>> な状況では有りません.このとき全ての変数のスケールを1に固定した相関行列
>> をもとに,最小2乗法で因子分析や共分散構造分析をするのは
>> いかにも私意的です.また素点の共分散行列を分析した結果とはかなり結果が違います
>> (主成分分析はモデルそのものが尺度不変ではなく,相関行列と共分散行列では
>> 分析結果が本質的に異なる例がよく引かれますが,それと同じです)
>> ここで重要なのは,結果が違うということであって,間隔尺度ですから
>> 素点の共分散分析を分析したほうが妥当であるとはいえないということです.
>> また素点の分散が互いに似ていても
>> 本来,因子分析モデルは尺度不変なのですから,その素晴らしい性能を生かせる
>> 一般化最小2乗法や最尤法のほうがいいのではないでしょうか.
>> 
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>> Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor,      Department of Sociology
>> TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University
>> toyoda (at) rikkyo.ac.jp  3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan                                  
>> ----------------------------------------------------------------------

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    南風原朝和  (はえばら ともかず)
     haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp
〒113 文京区本郷7-3-1 東京大学教育学部
TEL: 03-5802-3350     FAX 03-3813-8807
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