[fpr 166] Next Workshop & Re:fpr162

長谷川芳典

長谷川@岡山大学文学部心理学教室です。
ワークショップに関連して多数の御発言がありました。
卒論提出締切が月末に迫り毎日執筆指導に追われ、また2月1日に
修論の諮問などを控え、議論に参加する余裕がなく、たいへん残念に
思っております。
 
ワークショップのテーマや話題提供者はぼ固まりつつありますので、
今回の企画者は、南風原さんと長谷川(南風原さんからの要望があり、
順番は長谷川・南風原)のほうでお引き受けすることとして、司会者
や指定討論者については個人メールのやりとりで月曜日をメドに確定
させていきたいと思います。
(このfprで“Aさん、司会者をお願いします”、“私はちょっと...”、
“やっぱりお願いします”というようなやりとりをしますと、1回に
つき150人もの方にメイルが配信され、日本心理学会会員以外の方には
いろいろご迷惑をかけることになりかねませんので...)
ということで、もし、指定討論者や司会者のことでご提案がありましたら、
南風原さんか長谷川のほうに個人メイルでお願いします。
 
1つだけ
[fpr 162] 豊田@立教社会さん:
fpr162>>F00975 (at) sinet.ad.jp さんは書きました:
fpr162>>1例をあげますと、私のところでは、例年、信頼性係数について
fpr162>>誤解している卒論生が多く、奇妙に思っておりましたが、原因は、
fpr162>>新版SPSSx(三宅他、東洋経済新報社)の第3巻196頁の記述
fpr162>>にあることが最近わかりました。
fpr162>(以下具体的な記述はありません)
fpr162>この長谷川先生の指摘のしかたは,望ましくないとおもいます.
fpr162>この書き方は個人をほとんど(完全に?)特定していますが,
fpr162>批判の内容が書かれていないので学問的指摘にはなっておらず結果的に
fpr162>個人の名誉を不当に毀損しているのみではないでしょうか.
 
この部分の私の発言は、
>卒論研究などで見られる誤用、誤解釈を議論することもたいへん
>有意義であろうと思います。
という行に引き続いて書かれたもので、解説書の執筆者が誤用をしている
などと発言したつもりは毛頭ありませんでした。あくまで、解説書を読んだ
卒論生の側の誤解釈を問題にしたかったのです。
しかし、具体的な内容を御紹介しなかったので、執筆者の方にご迷惑をおかけ
したとすればお詫びいたします。
 
この問題は2年前の卒論の諮問の際に感じたことだったのですが、
私が卒論生に“アルファ係数の大きさは何を意味するのですか”というような
質問をしたところ、確か5人中4名が“その測定が時間を隔てていても安定し、
一貫した結果を得られるかどうかを示すもの”というような答え方をしました。”
もちろん、信頼性の定義はこういうことでよいのでしょうが、アルファ係数の
大きさから直ちにこのような解釈をしてしまうのは大いに問題であると感じま
した。
そこで、どうして卒論生がみな同じような答え方をしたのかを調べてみまし
たら、上掲の書の“信頼性とは、どの程度その測定が時間を隔てていても安定
し、一貫した結果を得られるものかに関わる問題である...状況も測定対象
も変わっていないのに、同じ測定を繰り返すと結果が大きく変わるテストは
信頼性があるとは言えない”という記述をそのままアルファ係数の大きさに
結びつけてしまったためであることがわかりました。
確かに信頼性係数は“これらはあくまで再テスト法の抱える様々な短所を克服
するために考案された方法であり、繰り返して測定した場合の安定性として
信頼性を考える点は全く同じ”(堀・山本・松井編、心理尺度ファイル−−
人間と社会を測る−−、垣内出版、643頁)ということを意味するので、
卒論生の答えをいちがいに誤解釈であると決めつけるわけにはいかないと
思いますが、私自身はやはり統計的数値と解釈とのあいだに飛躍を感じざる
をえません。ご意見をお待ちします。
 
私がこの発言で言いたかったことは、卒論生が統計解析の知識を十分に身につ
ける余裕のないままにデータを集め、機械的に統計パッケージにデータをぶち
こんで、(統計解析の解説書ではなく)パッケージの解説書の簡単な解説だけ
を頼りに誤解釈や拡大解釈してしまうケースが多いという意味です。
もっとも、以上述べた点は岡山大学の卒論生の問題ですので、“教え方が悪い
からだ”と言われればスタッフの一員としては返す言葉はありません。
しかし、4年間のカリキュラムの中で統計解析の教育ばかりに時間をかける
わけにもいかず、暗中模索の状態にあるのが実情です。
 
いま話題になっている因子分析に関しても、卒論研究の段階ではいろいろな
問題があるように思います。卒論諮問などが終わって一段落しましたら、
いくつか事例を御紹介したいと思っております。
 
長谷川芳典 岡山大学文学部心理学教室

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