[fpr 181] graduation theses(2)

長谷川芳典

長谷川@岡山大学文学部心理学教室です。
 
卒論を読みながらの感想の第2弾です。
既成の尺度や自家製の尺度を用いて分析をしている学生が多いのですが、いった
ん尺度得点について比較をしたあとで、個々の質問項目の回答内容を個別に点数
化して、t検定や分散分析をしている論文が3つほどありました。
こういうことはどこまで許されるのでしょうか。
 
例えば女子大生の就職問題から生じる葛藤について、“葛藤処理尺度”を用いた
学生がいます。まずは、“葛藤処理”得点について学年や所属大学間で比較をし
ます。その後、この尺度の個々の質問項目、例えば“就職が無理なら大学院に行
ってもよいと思う”という質問を1つの態度表明と解釈して、その得点を群間で
比較するというやりかたです。
 
私の知る限りでは、いろいろな心理尺度における質問項目は1種の言語刺激であ
ると見なされ、その質問に対する反応の解釈は一連の質問に対する反応との関連
において初めて意味をもつと考えられているように思います。
上に述べたやりかたをMMPIにあてはめてみると、例えば“新聞の社説を毎日
は読まない”というような質問項目を、まずlieスケールの尺度得点の算出に使っ
たあとで、新聞の社説を読む頻度に群間で差があるかどうかを検定するというこ
とも許されることになると思うのですがいかがでしょうか?
(1つの質問が、ある尺度で意味をもつ言語刺激としての機能と、客観的事実
を把握するという機能を併せ持つ、と柔軟に考えることもできるのかも
しれませんけれど。何となく、double standardになっているような...。)
 
尺度のことを専門に研究されている方からのご教示をいただければ幸いです。
長谷川芳典 岡山大学文学部心理学教室

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