[fpr 194] factor score

堀啓造

堀 啓造@香川大学経済学部です。

南風原@東大教育心理[180]wrote:

>まず直交解の場合,因子得点は互いに無相関となるように計算され
>ます。これに対し,粗点合計のほうは一般には無相関とはならず,
>時にはかなり高い相関をもちます。

以下は一般的な因子分析解釈時のおこる問題として指摘しておきたいと思います。

かなり高い相関をもつときは、もとの単純構造の仮説がおかしい時のようです。わ
たしも、0.7以上の相関がある場合に遭遇しています。しかもバリマックス回転解は
きれいな単純構造を示しているのです。こんなときは、回転前の第1因子に注目し
ます。固有値でも、負荷量でもいいですが、第1因子に多く負荷している、または
寄与率が高い場合は、単純構造の仮説は破れています。しかし、バリマックス回転
回転では単純構造を示すのです。

今の因子分析の本は単純構造しか示さなくなりましたが、
浅野長一郎(1971)『因子分析法通論』共立出版
は、いくつかのタイプにわけています。
(1)単一因子解法 (単純構造モデル)
(2)2因子解法 (Spearman 一般因子1つと特殊因子)
(3)双因子解法 (全般因子と部分因子)
(4)多群解法 (斜交解)
現在ではおそらく斜交解で一般化できたということになるんでしょう。斜交解はた
しかに便利ですが、モデルを考えるときは、泥臭い(1)から(3)についても考慮すべ
きでしょう。

たとえば、(3)のデータを(1)で分析した場合、わりときれいな単純解がでます。

SPSSの出力ですが、人造データから求めた次のようなバリマックス回転後の結
果があります。

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Rotated Factor Matrix:
              Factor  1     Factor  2     Factor  3

V1                 .94           .24           .24
V2                 .91           .29           .29
V3                 .96           .19           .19
V4                 .24           .24           .94
V5                 .29           .29           .91
V6                 .19           .19           .96
V7                 .24           .94           .24
V8                 .29           .91           .29
V9                 .19           .96           .19
*******************************************************
分析になじんでいる人ならあやしいと思うかもしれませんが、まあ、きれいなほう
ですね。これを直接解釈して、合計点の相関を求めます。
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             Z1         Z2         Z3
Z1           1.0000      .5000      .5000
Z2            .5000     1.0000      .5000
Z3            .5000      .5000     1.0000
*******************************************************
直交のはずなのに高い相関がでるじゃない。と問題にするわけです。でもその理由
は、相関行列または、回転前の因子負荷量または固有値を見れば理解できるはずで
す。
*******************************************************
Factor Matrix:
              Factor  1     Factor  2     Factor  3

V1              .81675       -.45859        .35214
V2              .85657       -.40331        .30969
V3              .77471       -.49521        .38026
V4              .81675        .53426        .22108
V5              .85657        .46985        .19443
V6              .77471        .57692        .23873
V7              .81675       -.07567       -.57322
V8              .85657       -.06655       -.50412
V9              .77471       -.08171       -.61900
*******************************************************
Factor   Eigenvalue   Pct of Var   Cum Pct
     1       6.00904       66.8         66.8
     2       1.48041       16.4         83.2
     3       1.48041       16.4         99.7
*******************************************************
もともと第1因子の寄与率が高いものが、回転後3つの因子に寄与が分散していま
す。このような場合は、一般因子があります。上の双因子解のモデルとなり、単純
構造のモデルそのものが間違っています。そのため、素点の合計点間に相関が高く
なるのです。

もっとも、このようなことは斜交回転をすれば理解できることです。
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Factor Correlation Matrix:
              Factor  1    Factor  2    Factor  3
Factor  1      1.00000
Factor  2       .49330      1.00000
Factor  3      -.49330      -.49329      1.00000
*******************************************************
しかし、この相関行列で一般因子があると直接理解できる人はどの程度いるのでし
ょうか。まあ、この相関行列をみてそこに頭が回らないのはかなり問題があるかも
しれません。実際にはもっと微妙なことが多いと思われます。

このようなことは、本を読んでもでてきませんし(言い切るほどの自信はない)、
経験をつむほど実践データにあたるのはまれです。そこで、いろんな人造モデルを
つくって、因子分析をし、診断できる能力を形成する必要があるのではないかと思
います。たくさんの経験をつまないと因子分析の解釈はあぶない。

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鈴木さんの場合、因子得点を使っていますが、それでもいいという大きな理由はサ
ンプリングがしっかりしているということです。鈴木さんの中でも指摘しているよ
うにサンプルが違えば大きくことなります。尺度化をするときは、サンプリングを
しっかりして、一般的な尺度になるようにします。心理学の場合、便宜的なサンプ
ルでよく実験・調査をしますから、因子得点ではあまり意味をなさないのではない
でしょうか。まあ、尺度化がしっかりしていないものは素点でも問題があります。



香川大学経済学部
        堀 啓造
hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp

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