[fpr 234] q

豊田秀樹

豊田@立教社会です

Kazuo Shigemasu <kshige (at) sys.titech.ac.jp> さんは書きました:
>豊田さん
>1. 最小二乗法とはランクの小さい行列による共分散行列(対角要素は共通
>性)の近似問題であり、tr(S-LL')^2を基準とするならば、固有値問題に帰着すると
>いうのが私の知識ですが、ここでは違った意味で使われているのですか。

ご認識のとおりです.(暗黙のうちに)共通性が未知の場合に限定されていますから
繰り返しのない主因子法とは異なるという立場で議論が進んだと思っています.

>2. 直感的に理解しやすい最小二乗解(LSQ)よりも、統計的に健全な一
>般化最小二乗法、周辺最尤法へとの移行は1種の必然かもしれませんが、これが
>不適解の多さと結び付けられるとすると疑問に思います。(これは豊田さんの意見
>ではない?それどころか誰の意見でもない?それならもちろんそれで良いのですが)

御指摘の論調は,このリストでは初見です.論文その他で読んだ経験も有りません.
(注:たぶんこれまで最尤法と呼んでいた同じ方法を周辺最尤法と呼んでいますね)

>不適解については、何も、LSQの専売特許ではないし、また、これは、むしろ、技法の
>問題であり、世の中にたくさんある制約条件下の最適化のアルゴリズムを使えばよい
>というのが持論です。(こうしないのは、理論的理由があるのか、プログラマーの
>怠慢なのか、どちらなんだろう?)元々、不適解の問題は、数学的に収束の保証の
>ない素朴な繰り返しアルゴリズムを採用したせいで増幅されているのだとも思うし、
>理論的に、不適解を防ごうと思えばベイズ的にそうすることもできるし――――

不適解が出たときに,ベイズで「理論的?」に回避すると,まず確実に「「主観的」
な処理をした」と非難されるでしょうね.御立場はわかりますが,実行するのは無
理です.

>(きりがない)。不適解は、モデルがデータに適合していない指標であるから
>このままにしておいた方が良いという意見があることは承知していますが、モデルと
>データの適合という大問題は、理論的にすっきりしたより鋭敏な方法によるべき
>でしょう。

GFIやその他の指標は,十分に鋭敏だと思いますし,ヘイウッドケースは
適合していないことを「すっきり」と示しているのではないでしょうか?

>3. 因子得点の分散分析をするな(屋上屋を重ねるな)というご意見は、因
>子を解釈すれば立派に独り立ちする風潮に対する警鐘でしょうか。警鐘の部分は
>わかるのですが、本来、誰も観測しない因子に対する情報としては、因子負荷量も
>因子得点も同等の情報を持っているはずです。それに、因子得点の推定の不安定性を
>いうならば、バイアスのないノイズの累積ならば、個々の因子得点の値をうんぬん
>するよりも分散分析の方がロバストです。また、この誤差の累積ということ自体、
>その非は現行の2段階のいわゆるconditional analysis的な方法に帰すべきで、
>私は、因子負荷量も因子得点も対等に、たとえば、MMLで推定すればよいと思って
>います。

ここのMMLは,相当に広義の意味で使われていますね.わたしの意見は
「スコアの分散分析がしたければ,個々のスコアから平均値を計算するのではなく
因子負荷と群ごとのスコアの平均値を直接推定すれば良い」というものです.
この計算はcalis以外のほとんどのソフトで実行可能です.スコアの平均値は
漸近有効で推定できます.回帰効果の影響は出ないし,誤差関数も1度しか
使いません.

>4. これは、2、3日前に書いたことですが、因子回転基準は、パターンで
>かいても、構造でかいてもよいわけですから、自分でプログラムをかくつもり
>ならば、因子構造の単純構造が得られます。この方が、解釈の上では有利のような
>気がしますが、いかがですか。少なくとも、本来、日常的観察の上で関係があると
>思っていた変量の負の重み(因子負荷量)の解釈に悩まなくてもすむのでは?

パタンと因子間相関は持っている情報が互いに冗長でなく,使用してみると,
使い易いことが実感できるのですが,,,構造と因子間相関はコンビが組みにくい
と感じています.どっちがイイかという議論はこの辺でやめましょう.
パタンの解釈例はいくらでも示せるわけですから,この議論を仮に続けるのであれば
「構造を使った素晴らしい解釈例」をまず出して,それを肴にしましょう.

>(この際、アメリカの雑誌でどうこうというのはあまり関係がないと思いますが)

何にあまり関係がないのですか?理論だけに興味があるのであれば話しは別ですが
スキーでもテニスでも将棋でも,理論書ばかりでなく,先輩の無駄のない洗練された
動きをみるのは重要です.定石を知るという作業は実務の効率を著しく向上します.
定石に反し,御葬式に赤い服をきていくには,むしろ相当の理論武装が必要ですから.
また「教科書で同じくらいページが割り当てられているのに,何故ここばかり
使われるのだろう」という発見は,理論的にも次の1歩を踏み出すのに有効です.

>上記の質問に興味があればお答えいただければ幸いです。
>繁桝算男

この書き方(気持ち,精神)を,当メーリングリストのエチケットの基本にすることを
提案します.現在,このリストでは気軽に名指しで話題を振る風潮が流行しそうです.
もちろん配慮のない指名を無視してもエチケットに反しないのですが,それよりその前に
「指名」を遠慮するほうがよいと思います.

----------------------------------------------------------------------
Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor,      Department of Sociology
TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp  3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan                                  
----------------------------------------------------------------------

スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。