[fpr 257] 知能の高次因子

堀啓造

堀 啓造@香川大学経済学部です。

知能についていろいろいったので、ついでにぶちまけてしまいます。

知能の高次因子の考えはいくつかあるようですが、比較的最近だと、Horn,J.L 
が活躍しています。彼はCattellの「流動性一般知能 Gf」と「結晶性一般知
能 Gc」を高次の知能として設定してます。このモデルはどうにも複雑でわか
りにくい。幸い日本語で読むことのできる文献があります。

B.J.ウオールマン(杉原一昭監訳)(1992) 知能心理学ハンドブック 第1編
 田研出版 第7章 原著出版 1985

しかし、この章(本ではないです)は誤訳、誤植、校正ミス、そして、勝手な
省略(文章がごそっと抜けている)、勝手な改段落とすざましい翻訳でした。
図表の部分はノーチェックじゃないかと思う、数値、文字の抜けなどもありま
す。また、図表部の訳語と本文との訳語が違っているのもあります。このよう
ないい加減な翻訳ですが、すごい高い本(税抜き8350円)です。監訳者の責任
でしょうね。もっとも、監訳がついているのは悪い訳という見方もあるようで
す。再度強調しますが、訳が悪いと気づいたのはこの章だけです。

p293の図は間違っていないようでした。しかし、心理学のデータでこのような
複雑怪奇なモデルがたてられるのでしょうか。p294(誤訳や文字落ちがある)
のように線が少ないとわかったつもりにもなれるのですがね。

p293の図(11)は知能の新モデルといっていて、数値がでていないので、因子分
析によって確認したものかどうかよくわからない。もし、因子分析の結果でな
いとすると、2次因子として、6つでてくるのにそれを階層化する根拠が発達
データだけでいいのだろうか。

Horn は一貫してg因子を否定している。g因子は因子分析的にはでるけどカ
メレオンのようにその内容がかわるというのが主たる否定の理由です。確認的
因子分析でgはだめだというのも同書で示しています。ただし、100人のデ
ータで。

わたしには、
J.B. Carroll(1993) Human cognitive abilities: A surevey of factor    
analytic studies. Cambridge.
のような考え方のほうが心理学のようないい加減な分野には向いていると思う
。Carroll はHorn のモデルを2層モデル、自分のモデルを3層モデルといっ
ていて、3層目にg因子を考えます。
2層目(1)fluid intelligence,(2)crystallized intelligence, (3)general 
memory and learning, (4)broad visual perception, (5)broad auditory 
perception, (6)broad retrieval ability(流暢性など),(7)broad coginitive 
seediness, (8)processing speed(RT decision speed)

この結果はいろんなデータを寄せ集めて因子分析して得ています。

相関係数の値はそもそもそんな精度の高いものでないのであまり多くの変数を
絡ませた複雑なモデルづくりに向いていないと思うのですがどうでしょう。

香川大学経済学部
        堀 啓造
hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp

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