豊田@立教社会です Yutaka KANO (Tsukuba University) <kano (at) math.tsukuba.ac.jp> さんは書きました: >狩野@つくば大学です(出身は大阪です) >> その真値でありますが,大学院生のとき行ったシミュレーションでは,共通性 >> の値を高くセットすると「良性」の不適解がたくさん観察されました.考えてみれば >> 統計量は真値のまわりにばらつくのですから,真値が0.3の場合と0.95の場合を比較 >> すれば,後者の推定値が1.0を突破する確率が高くなるのが自然です.統計学的 >> にはそれで良いのでしょうが,心理学の立場からは少々パラドクス的です. >> 一般的に,プサイは測定誤差分散と独自因子分散の和と考えられ,項目作製段階 >> ではワーディングに気を配り,信頼性が高くなるように,他の項目との構成概念妥当 >> 性が高くなるように配慮し,共通性を高めようと努力しているからです.心理学の技 >> 術的な現状では信頼性や妥当性をそれ程高くできないから,この問題は表面化しない >> のかもしれません. > >不適解になるかどうかという点で、モデルの信頼性(?)を測るときは、このような >結論ですね。真値が 0.3 の場合と0.95 の場合を比較するとき、一般に、推定値の標準 >誤差は、0.3 の場合のほうが大きくなると思います。ある意味で、\Lambda の部分が >弱いと、\Psi は不安定になり、漸近分散(標準誤差)が大きくなるからです。このよう >に考えると、そのパラドックスは解消しませんか? 一般的な分析状況では,真値が0.3というのは「\Lambda の部分が弱い」状況では ありませんよ.1因子の場合は因子負荷約0.55,2因子の場合は因子負荷0.4,0.4 の状況ですから.ただし真値0.3の場合の標準誤差のほうが,真値0.95の場合よりも大 きいのは御指摘のとおりです. けれども,他の母数の設定状況にも依存するのですが,わたしの試みたシミュレーシ ョン状況では真値0.95の場合に,かなりの高率で良性の不適解が現実に発生しましたの で,パラドクス的な状況が存在することは確かであろうと思われます. >一方、ソフトウェアの製作者が制約をつけたがる気持ちも分かるよう >な気がしますが。 はい,そうですね.尤度モデルでデータと格闘するときは,最適化計算をしている パソコンの画面を見ている時間が一番長くなるものですから,,,, でも,イライラしながら画面を眺めているうちに,次にトライするモデルの候補を 着想したりしますから,まるっきり無駄な時間ともいえません. Keizo Hori <hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp> さんは書きました: >堀 啓造@香川大学経済学部です。 >豊田さんの本を眺めていて、WISC-R の12歳のデータを見つけました。 >豊田秀樹(1992) SASによる共分散構造分析 東京大学出版会 p.199 >これを再分析したところ、やはり不適解がでます。豊田さんの分析はcalisでの言語性 >因子、記憶因子、動作性因子の3因子+2次因子の一般知能因子です。 > 1 2 3 4 5 >uls ○ ○ × × × > ml ○ ○ × × × (参考) (中略) >知能検査の因子分析はあぶないのかな。 この問題に関しては短期間に大量の情報が集まりましたね.以下,小生の結論です. まず,臨床的には3種類の変動が実感されているので,統計的に2因子vs3因子 という議論はしないで3因子を採用してよいと思います.実感にあわないモデル を提示してもしかたが無いと思うからです. しかし,3因子の探索的因子分析を実施すると,現実には複数のWISCデータに関し て,かなり「安定的?」に不適解が観察されました.これは3番目の変動を主として 測定している観測変数が2つしかないためですが,これはもちろんWISCの側に問題があ るためではなくて(因子分析のためにWISCがあるのではないから),探索的因子分析 法の数理的な分析力不足が原因です.言い換えるならば「探索的因子分析はWISCの臨床 的実感に合うモデルを提示する道具として適当とはいえなかった」ということです. そこで,狩野さんが2つ前のメールで「横においておいた」モデルを 正面にもってきて,臨床的な実感にあう,3因子の確認(検証)的or高次因子分析 を提示すればよいと思われます.母数の数が減って,モデルの表現力が強くなります から服部さんの示した例も切り抜けられるのではないでしょうか? Kazuo Shigemasu <kshige (at) sys.titech.ac.jp> さんは書きました: >1.最小自乗解 >最小自乗解は固有値問題を避けられることと言うコメントがあったような気がして書き ました. 引用をしていただけると効率がよいのですが,もしかしたら, toyoda (at) rikkyo.ac.jp さんは書きました:「以下自分の引用」 >また反復のない主因子法を学生に教える場合には固有値の知識を必要とします >が,最小2乗法では,それが必要有りません.基礎知識のハードルが低いとい >うことです. の箇所に関する御指摘でしょうか?そうだと仮定して(違っていたら無意味ですが) 補足説明いたします.ここで主張しているのは,因子分析法を講義する際に,最小 2乗法を教材として選択すれば,固有値を習っていない学生に固有値の講義をせず に,推定法を理解させられる指導案を書くことができるという,教科教育的アイデ アです. >2.不適解の処理 >萩生田さんとの修論で、シミュレーションデータにもかかわらず、たくさん、不適解が でました.(狩野さんの言う良性).その際、これはおかしいと思いました. 私は,教科書を執筆する際に,自分のシナリオに適した分析例を探す目的で,たくさんの 実際のデータを集めて端から解析をするのですが,最尤法を使用しますと,「不適解」 はめずらしい事例ではなくて頻繁に(覚えきれないくらいたくさん)遭遇します.しかし その中で今までに「良性」と判断できた事例は,前回のメールで報告した事例ただ1件 だけです.わたしも分析経験が豊富とはいえませんが,フィールドデー タを分析する場合に遭遇する不適解の圧倒的大多数は「悪性」の事例であることは 間違いないことであろうと思われます.「良性」は理論的には考えられても,シミュ レーションでは簡単に作れても,フィールドデータで出会って興奮できることは,め ったにありませんから,「不適解」は,まず「悪性」の除去のための「重要な道具」と 考えていて実用的には問題ないのです. 後日談ですが,その「良性」と判断した「体格データ分析」は結局,日の目を見ないで 終りました,教科書の教材としては,そういう「きわもの」の例は適当でないと思った からです.教科書の分析例として評価する場合には,それこそ推定法を「総動員」して 方法間で結果が安定していることを確認することが必要だと思います. >4.因子得点 >因子得点の所のコメントは理解できませんでした.勉強して見ます. >因子得点のMMLとは、自分のやっていることが下敷になっています. 拙著の引用が多くて申し訳有りませんが,本質的には前掲瀬著の211ページから 217ページに記述したモデルであります.個々の高校の因子スコアを推定して, それからそのスコアの平均値を計算するのではなく,個々の高校のスコアは無視 して,進学率別のスコアの平均値を直接推定しております.このモデルはいわん としていたモデルとは少し違いますが本質的には同じです. また,因子スコアの分散分析は,残念ながらロバストではありません.第1因 子のスコアの推定値の標本標準偏差は,場合によっては0.9とかになりますが, 弱小因子の因子スコアの推定値の標本標準偏差は回帰効果のために0.6とか0.5 とかになるからです. >ちょっと申し訳ありませんでした. とんでもありません.恐縮してしまいます.親しさに甘えて,つい気楽に メールを書いてしまっておりますが,筆がすべった箇所があると思います. こちらこそ申し訳有りませんでした. ---------------------------------------------------------------------- Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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