堀 啓造@香川大学経済学部です。 南風原さんの 『心理・教育のための多変量解析法入門−事例編』福村出版 p78-79 を読んでいると「7 各下位検査の特殊性と差得点の信頼性」という説があり ます。入門書だけど、一般書でもあまりふれられることのないことが書かれて います。その前段として、(4-1)式があります。分解して示すと 標準化された変数の分散=共通性+特殊性+誤差分散=1 独自性=特殊性+誤差分散 信頼性=共通性+特殊性 信頼性とのからみで因子分析の共通性等が語られるのは私にとって初見です。 この関係から明らかなように共通性は信頼性の大きさを超えることはありませ ん。そうすると、信頼性を超える共通性をもつものは不適解といってよいと思 います。p79の信頼性は、0.61-0.85 です。心理学の尺度で信頼性が 0.90 を 超えるのはきわめてまれなことでしょう。IQでは見たことがありそうですが 、性格検査系統ではまずありえません。 この偏見からすると、心理的項目の因子分析の共通性が 0.90 を超えること自 体、その因子分析の結果に問題があることを示すことになるのではないでしょ うか。そうすると、共通性が 1.0 を超えることははっきりおかしいといって もいいのではないかな。 香川大学経済学部 堀 啓造 hori (at) ec.kagawa-u.ac.jp
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