南風原@東大教育心理です。
鈴木さん@日経リサーチ wrote:
>> 1990年に「因子分析−その理論と方法−」が出た時,私たちの間で最大の
>> ショックだったのは,繁桝先生が2値変数のピアソン積相関係数行列の因子分
>> 析は「妥当ではない」と書かれたことでした.
上記の本の138頁に,「2値変数の間のピアソン積率相関係数(φ係数,または
点相関係数と呼ばれる)・・・の値は平均(すなわち通過率)に影響されて範囲が
定まる」とあり,Lord & Novick(1968)の347頁には,その係
数の取りうる最大値の式があります。
その式は,変数1の通過率をp1,変数2の通過率をp2とし,p1>=p2とし
たとき,2変数間のファイ係数の最大値が
(p2*(1−p1)/(p1*(1−p2)))^2
で与えられるというものです。
試しに,通過率が0.1から0.9までの変数x1,・・・,x9を考え,それら
の変数間に上記の式で与えられる最大のファイ係数の値を与えたとき,因子分析の
結果がどうなるか調べてみました。
つまり,1つの(したがって1因子で完全に説明できる)量的な変数を,通過率が
0.1から0.9までになるように2値化して作った変数を因子分析したとき,何
が起こるかを調べたものです。
データとプログラム(3因子まで求めて回転)は次の通りです。
data x ( type = corr ) ;
input _type_ $ _name_ $ x1 -x9 ;
cards ;
mean . .1 .2 .3 .4 .5 .6 .7 .8 .9
corr x1 1 . . . . . . . .
corr x2 .67 1 . . . . . . .
corr x3 .51 .76 1 . . . . . .
corr x4 .41 .61 .80 1 . . . . .
corr x5 .33 .50 .65 .82 1 . . . .
corr x6 .27 .41 .53 .67 .82 1 . . .
corr x7 .22 .33 .43 .53 .65 .80 1 . .
corr x8 .17 .25 .33 .41 .50 .61 .76 1 .
corr x9 .11 .17 .22 .27 .33 .41 .51 .67 1
;
proc factor data = x
n = 3
m = prinit
r = varimax ;
var x1 - x9 ;
run ;
主因子解およびバリマックス解は次の通りです。
Factor Pattern
FACTOR1 FACTOR2 FACTOR3
X1 0.47641 0.41149 0.25470
X2 0.69843 0.56960 0.31425
X3 0.77427 0.39552 0.00213
X4 0.83802 0.21996 -0.22615
X5 0.86820 0.00000 -0.35235
X6 0.83802 -0.21996 -0.22615
X7 0.77427 -0.39552 0.00213
X8 0.69843 -0.56960 0.31425
X9 0.47641 -0.41149 0.25470
Rotated Factor Pattern
FACTOR1 FACTOR2 FACTOR3
X1 0.12189 0.66306 0.08164
X2 0.22323 0.92073 0.11588
X3 0.50813 0.69273 0.13362
X4 0.72201 0.49624 0.18508
X5 0.83698 0.29794 0.29767
X6 0.72230 0.18491 0.49588
X7 0.50866 0.13290 0.69249
X8 0.22398 0.11450 0.92072
X9 0.12244 0.08061 0.66308
予想された結果ではありますが,通過率の近い変数が同じ因子に負荷して
クラスターを構成する傾向が顕著に見られ,通過率の差に依存した分析結
果になることが分かります。
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南風原朝和 (はえばら ともかず)
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