[fpr 374] AIC of CSA

狩野裕

狩野@つくば大学です


> 堀 啓造@香川大学経済学部です。[fpr 371]の自己フォローです。
> 
> >(4)SASとEQSがAIC=χ2−2df を使っているのは問題がありそう。AICだ
> >から2tを使うのが筋のように思えるが、dfを使う意味がなにかあるのでしょうか。
> 
> Bollen and Long (eds.) Testing structural equation models. Sage. 1993
> 
> を眺めていると、Bollen, Joreskogの2人は別の章を書いていますが、
> AIC=χ2−2df を使ってます。宗旨替えか。こちらのほうがメリットがあるのかな
> 。Bollen の章のグラフを見ていると、マイナスに意味がありそうがグラフがでています
> 。やはり知りたい、どういう意味があるのか。


別に意味がある訳ではありません。どちらでも良いのです。

項目数: p
パラメータ数: t=dim(θ)
自由度: df

とすると、

     df=p(p+1)/2-t

なる関係式があるので

χ^2 - 2df = χ^2 + 2t-p(p+1)

となり、-2df を使っても +2t を使っても、定数 -p(p+1) しか違わないことに
なります。AIC はそれ自身の値には意味はなく、2つ以上のモデル間の比較(AIC
の差)に意味があるので、定数を加えたり、引いたりしても問題はないのです。
ここで、「定数」とは、モデルΣ(θ)に依存しない量で、確率変数であってもか
まいません。

CSA の context では、χ^2 とその自由度 df がなじみが深いので、パラメータ数
を表に出していないソフトが多いのだと思います。



以下補足:

AIC の本来の定義は

AIC = -2(モデルの最大対数尤度)+2(モデルの自由パラメータ数)

です。正規母集団では、共分散構造モデルΣ(θ)に対して

-2(モデルの最大対数尤度)=n{log|Σ(^θ)| + tr[SΣ(^θ)^{-1}]+ plog(2π)}

ですが、これ自身はχ2 ではありません。「定数」である

n{plog(2π)+log|S|+p}

をひくことにより、

n{log|Σ(^θ)| + tr[SΣ(^θ)^{-1}] - log|S| - p}

が、χ2 のパートになるのです。ここで既に、「定数を加えたり、引いたりしても
問題はない」という性質を使っています。

CSA でよくでてくる AIC の定義は

AIC=χ2 - 2df
   =n{log|Σ(^θ)| + tr[SΣ(^θ)^{-1}] - log|S| - p} - 2df

ですが、本来のAICの定義との違いをみるために、若干の式変形をすると

   =n{log|Σ(^θ)| + tr[SΣ(^θ)^{-1}] + plog(2π) -plog(2π)
     - log|S| - p} - 2(p(p+1)/2-t)

   =n{log|Σ(^θ)| + tr[SΣ(^θ)^{-1}] + plog(2π)} + 2t 
     -nplog(2π) - nlog|S| -np - p(p+1)

   =AIC - nplog(2π)- nlog|S| - np - p(p+1)

となります。したがって、CSA のパッケージでのAICの出力の多くは

     - nplog(2π)- nlog|S| - np - p(p+1)

が、本来のAICの定義に加えられている、ということになります。

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