長谷川さんからの私(岡本)のコメントに対するメールに 次のような文章があります。 >私のところの学生に関して言えば、“この行動(あるいは行動現象)の原因は何か”と い >う問題 >がいつの間にか“この行動をする人としない人との違いは何か”という問題に置き換わ っ >てしま >い、質問紙調査に走ってしまう傾向がどうも強いように見受けられます。 長谷川さんは、卒論指導の経験から、行動の原因の研究者として、上記のような 問題意識をもたれたということでしょうか。 私の方は、卒論で社会心理学を選んでいるものを読むときに、個人差の要因も 大切だという印象を持ちます。 同じ刺激、同じ事態に対して、人によって異なった理解、行動が行われるのは 日常生活でも経験することですが、社会心理学の場合は行動の原因の理解のためにも この個人差にも注意しておく必要があると思います。しかし、卒論での個人差の要因の 扱いには疑問を感じるものもあります。 内向性/外交性、帰属傾向などを独立変数の1つとしてとり上げているものに おいても、サンプリングに偏りが見られたり、あるいは強引にカテゴライズして分散 分析を適用したりというものがあるのです。これでは有意な結果が得られなくても 当然です。 だいたい、分散分析は、昔(1980年頃)使ったことのあるSPSSでは回帰分析の 特別な場合として位置付けられていました。それなら、連続量として得られている 性格などのスコアは、カテゴライズして分散分析にもちこまずに、連続量のまま 回帰分析にかける方が自然です。これは、私のところだけの現象であればよいのですが。 長谷川さんの最初のメールに対しての堀氏のコメントに >「因果」にこだわるのは西洋の「近代」のパラダイムであります。東洋の「気 >」の立場からすれば「相関」こそが重要です。このあたりの対立として考えて >もおもしろいかもしれません。 とあります。 西洋の理論志向の心理学は「因果」のみというわけでもないと思います。 Measurement theoryでrepresentationの問題が公理論的に扱われていますが、 これは「因果」の問題を中心にしているとは考え難いと思います。 岡本安晴@金沢大学文学部
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