南風原@東大教育心理です。 堀さん@香川大学経済学部が,以下のように書いています。[fpr 443] >> (2)「問題解題」の分散分析の「この意味で、分散分析は、因果性の同定 >> のためのオーソドックスな方法である。」 >> が[fpr 402]の因果関係についての発言に対応しています。そもそも環境 >> をコントロールすれば同じことを再現できるという発想が近代です。 この中の「環境をコントロールすれば同じことを再現できる」という叙述 との関係で,効果の一般性と母集団ということに関して,以下のようなこ とを考えました。(Oakes, M. 1986 "Statistical Inference", Wiley, pp. 163-166)にも"Aggregate versus general propositions"という見出しで 関連した議論が出ています。) たとえば,1要因の効果の分析ですと, y=μ+αj+εij というモデルになりますが,ここで条件と被験者との交互作用があると考 えるならば,αjは被験者母集団における平均的な効果の大きさとなり,で は「母集団」は何なのか,どんな集団における平均的効果なのか,という 問題が出てきます。 これに対し,条件jの効果が,どの被験者においてもαjだけあると考える と,この問題は回避されます。μという母集団平均を表す項はありますが, そのμからの被験者iの(全条件を平均した)偏差をβiとし,εijを βi+γijのように分解すれば, y=μ+αj+εij =μ+αj+βi+γij となり,μ+βiが被験者iの全条件にわたる期待値となります。これを μiとしてモデルを整理すれば y=μi+αj+γij となって,被験者母集団における平均というもの,そして母集団なる集団 を考えることなくモデルの各項を解釈・説明することができます。(だか ら効果は一定と考えましょう,ということではありません。念のため。) もちろん通常の統計的推論では後者の場合でも母集団に関する議論が必要 になってきますが,それでも,条件の効果を被験者によらず一定の,そう いう意味で一般的なものと考えているのか,単に母集団での平均的な効果 の大きさと考えているのかという区別は,被験者母集団というものの意味 を考える上で,また研究そのものの位置づけを明確にする上でも有用では ないかと思います。 :==============================================: : 南風原朝和 haebara (at) educhan.p.u-tokyo.ac.jp : : 〒113 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学教育学部 : : TEL:03-5802-3350 FAX:03-3813-8807 : :==============================================:
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