[fpr 456] factors which are not treated in expriments

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

豊田さん@立教社会の論文 [fpr 455] に,以下のように書かれています。

 >> たとえば「新しく開発された教材が,子どもの認知的な発達に望ましい影響を与え
 >> るか否か」検討する実験を例に挙げて考えてみよう.この場合は,まず「教材の新
 >> 旧」が実験の主たる要因となる.また主たる要因以外にも,特性値に影響する要因
 >> には「学年」,「教師の経験年数」,「教師のリーダーシップ」,「学級の規模」
 >> ,「プリテストの高低(学力)」,「向性」,「帰属傾向」,「興味」など実験に
 >> 採用できそうな要因は多数挙げられる.

教材の効果を見る研究であれば,その要因以外に「特性値に影響する要因」ではな
く,その要因の効果を左右する要因,つまりその要因との間に交互作用がある要因
が問題になるんじゃないですか。それがその要因の効果の一般性を規定するわけで
すから。

これに対し,従属変数の変動をできるだけ完全に説明し尽くすことを目指す研究で
あれば,その変数自体に影響を与える(主効果のある)要因を無視してはいけない
でしょう。

たとえば,

 >> \log 体積 = \log 縦 + \log 横 + \log 高さ + 測定誤差

の例で,体積(の対数,以後「の対数」を省略)に対する縦と横の効果を知ること
が目的ならば,高さを無視しても(一定にしても,ランダマイズしても,精度の違
いはあれ)見たいものは見れることになります。一方,様々な箱の体積の差異をで
きるだけ完全に説明することが目的であるならば,高さの無視は致命的になるわけ
です。

こうした研究目的の違いを明確にし,それぞれごとに考えるほうが,主効果と交互
作用効果の研究上の意義や,結論の一般化可能性の問題も考えやすくなるのではな
いか,という感想をもちました。

操作した要因以外の実験状況(何を固定し,何をランダマイズしたか等)や被験者
の特性の記述が重要であることは同感ですし,研究報告の「方法」のセクションを
書く際の注意事項として認識されていることと思います。

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