豊田@立教社会です 私は,共分散構造分析という統計手法の理論と応用に関心を持っています. 今は,特に調査データから因果モデルを作ることの実質科学的意味を考えていま す.といいますのは,調査票が回収され因子分析をして,それなりに分析に成功しそ うな共分散構造モデルからモデル探索を始めると,どうしてもモデル自体に説得力が 無い様な気がするのです.因子分析にお伺いを立てているのですから迫力がなく なって当然だと思います.特にLISRELのモデルの自動修正機能を使ったり, ラグランジュの乗数検定を使って「統計的に」モデル探索すると,心理学的に 無意味なモデルが最終的に残ることが多い印象があります.(今年の行動計量 学会で宮野勝先生「fprのメンバーかどうか不明なので先生とお呼びする」が 同様のことをおっしゃっていました)召し使いであるべき適合度に使われては いけないのではないだろうか?共分散構造モデルは柔軟で自由すぎるので, 統計的な観点からモデル探索をすると標本誤差の影響で意味のないモデルに 到達してしまう確率が高いのではないだろうか?なにしろ意味のあるモデルの 数に比べて意味のないモデルの数は天文学的な比で多いのだから(予選会で 1番でも本番では1番にならない現象に似ている). そこで実存主義的な項目の使い方はやめて,最初に時間をかけ討議をつくして パス図を作り,そのための項目を作り,データをとり,最初のパス図どおりに 計算して適合度を見る.モデル探索は極力しない(全くしないのが理想だが, 学生にパス図を作らせたのでは無理だということがわかった).という使い方 を提案する.こうするほうが,適合度はひくくとも研究対象に対する知見が深 まるような気がするのです. そんな日頃の考えを発表するコロキュームを下記要領で開催します.発表は私が 30分,学部3年生が30分,質疑20分です.学生達は2年生のとき共分散構 造モデルの理論の勉強をして,今は私と2人3脚で調査をしてます.お時間のあ る方は大歓迎ですので,是非お運び下さい.お茶は多分出ませんが,参加無料です. 豊田&豊田研・コロキュームのお知らせ 日時:1996年11月28日 (木曜日)15:00-16:20 場所:立教大学・5号館 5323教室 演題:大学生気質理解のための因果モデル構成の試み −大学生の孤独,自立,物を大切にする心− 内容:本年度,立教大学社会学部産業関係学科学生(約400名) に実施した仮説検証型アンケートの結果から,共分散構造分 析を用いて,学生気質理解のための因果モデル構成を行った. モデル探索を行わない分析の適合度をどの程度高められ るかを考察していく. ---------------------------------------------------------------------- Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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