石田@東北大です. asano_h (at) kt.rim.or.jp 氏は 「[fpr 502] 始めまして」において曰く: > 産業界の現場から見て隔靴掻痒な問題ばかり学者が議論していませんか?斜交 > 解の寄与率が、学問的に重大問題であるというのは勝手ですが、 このfprというメイリングリストはそういったことを話し合うための場です. そういった場で話し合われていることについて「隔靴掻痒な問題」といわれても 見当違いですね. 洋服屋に行って「ここには洋服しかない! 洋服は生活の役に立たないからこ の店は駄目だ」とかいわれてもねえ. > ございます。このところの鈴木さんの選挙予測における母集団推定をめぐるや > りとりを傍目で読んでいると、現実的な問題に対峙したときのアカデミズムの > 無力さを感じます。社会科学とか統計学とか、名前だけは実社会の問題解決に > 寄与しそうな学科がありますが、応用性と実効性は軽んじられていませんか。 この選挙予測は社会科学とか統計学といった学問から得られた知見をなにがし か利用していることは間違いありません(全く利用しないであれだけの精度の予 測方法を編み出したのならばそれはものすごいことだと思う). つまりこの事柄は逆に「現実的な問題に対峙したときの」アカデミックな知見 の有効性を示していることになるのでは? ついでにいえば選挙予測というのはかなり限定された問題である一方,社会科 学・統計学と言われているものの対象は多岐に渡ります.当然問題が限定されて いた方がよりspecificで有効な解決策を開発できるのは当然のことです. ここに参加している人たちすべてが選挙予測の専門家ではありません.そうい う人が束になったよりも,選挙予測を専門にやっている人の方がより適切な手法 を知っていても不思議ではありません. 専門店が総合店よりもより適切なのは当然のことでしょう? まあそれに選挙の当落予測が本当に「実効性」を持っているんでしょうかね? そのような予測がされたとして,選挙権を持つ人たちはどのような「実効性」の ある対策が取れるのでしょうか? とりあえず思いつくのは,自分が支持している候補者が落ちそうだったら投票 しよう,といったところですが,大概の選挙予測はそういったところも考慮して 予測するので,「実効性」があるかというとはなはだ怪しいと言わざるを得ませ ん. 高い精度で当落を予測できるのはそれはそれですごいことだとは思いますが, それと実効性はまったく別の話でしょう. > 応用から目をそらした研究など意味がない、と一実務家として感じています。 こう言ったことはよくいわれてその通りだとは思いますが,少なくとも今回の メイルに挙がっているような事柄からそういった教訓を導き出すのは難しいと思 います. 確認しておきますが,私はこの朝野さんの主張にいちゃもんしているのではな く,論証の仕方とその前提にいちゃもんをつけているのです.この程度の論証で は,結局「現場の人は全体を見ない近視眼の人ばっかりだねえ」とかいわれて終 わってしまうでしょうから. ---- 東北大学大学院情報科学研究科 :すいません 人間社会情報科学専攻 :所属名が長すぎて 人間情報学大講座 :signatureが4行以内に 認知心理情報学講座 :収まらないんですけど 石田 翼 e-mail: tbs-i (at) cpsy.is.tohoku.ac.jp, GHE04441 (at) niftyserve.or.jp HomePage: http://www.cpsy.is.tohoku.ac.jp/~tbs-i/ Key fingerprint = 74 59 19 BD 78 6B 82 17 E1 6B 26 35 CE 06 B2 94
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