[fpr 506] 斜交解の寄与率は?

豊田秀樹

豊田@立教社会です

Takuro Tomita <tomitat (at) marinet.or.jp> さんは書きました:
>> (3)斜交プロクラステス解
>> Variance explained by each factor eliminating other factors
>>  FACTOR1   FACTOR2   FACTOR3
>> 0.703403  0.856010  1.138759 (合計は 2.698172)
>> Variance explained by each factor ignoring other factors
>>  FACTOR1   FACTOR2   FACTOR3
>> 1.192120  1.651614  1.470218 (合計は 4.313952)
>> (3)の上の結果は,Reference structure (Semipartial 
>> Correlations) の行列の縦の二乗和で,他の因子の影響を除いた
>> (eliminating other factors) ときの「寄与」を表しています。
>> (3)の下の結果は,Factor structure (Correlations) の
>> 行列の縦の二乗和で,他の因子を無視した (ignoring other 
>> factors) ときの「寄与」を表しています。
>
>通常,斜交解で私たちが「寄与」という場合は
>上と下とで,どちらを使えばよいのでしょうか?


直交解では「寄与」を「当該因子の全観測変数に対する『独自の』説明分散」と解釈
しても「当該因子の全観測変数に対する説明分散」と解釈しても,両者は一致します
から,因子寄与は1種類で区別なしです.しかし斜交解の場合は一致しませんので前
者の意味では「上」後者の意味では「下」です.いずれにせよ常に留意すべきこと
は,全部の因子(この場合3つ)の全観測変数に対する「累積寄与」は(合計は4.31
3952や2.698172だけれども)3.442289 で直交解と同じということです.

「どちらを使えばよいのでしょうか?」という質問は,上記の性質を踏まえた後は,
趣味と慣例と紙数の問題となり,数理的な正解はなくなります.が,私は「他の人は
どお考えているのだろう」とずっと思っていました.以下,私の趣味を書きますので
批評・反論をお待ちします.選択肢は以下の4つとします

1.「上」「下」両方  2.「上」のみ  3.「下」のみ  4.書かない

まず「下」のみは,1つのやり方であると思います.各因子の観測変数に対する影響
力を素直に表現しています.因子間相関との解釈の組み合わせも良好です.それに対
して「上」のみというのは適切でないと思います.「上」「下」両方という総動員主
義を採用すると,上下の情報を総合して,たとえば「第2因子は他の因子との冗長度
が高い.第3因子は他の因子と異なる内容である」のような解釈ができます.

この4つの選択肢のうち,多くの場合私は4番の「書かない」流儀です.因子の数が少
ない(5から6位?)ときは,「上」「下」の情報を総合するより因子間相関を解釈
した方が細かな解釈ができるからです.ここでも
>           FACTOR1   FACTOR2   FACTOR3
>FACTOR1    1.00000   0.43696   0.05968
>FACTOR2    0.43696   1.00000   0.33901
>FACTOR3    0.05968   0.33901   1.00000
を観察すると上記の解釈に加えて「特に第1因子と第3因子が内容的に異なるのだ」
ということが明快に解ります.「他の因子」とまとめていないからです.学生・院
生には「斜交解にすると累積寄与が大きくなる」と思っている人もけっこういて,
斜交解が流布しつつある今日,誤解されたくないという気持ちもあります.でも観
測変数の数が多い場合は「下」を加え,因子の数も多い場合は「上」も加える
ことが,今後あるかもしれません.いずれにしても,累積寄与の問題は先手をうっ
て宣伝する必要がある気がします.

「思う」とか「気がする」という語尾が多くて歯切れの悪い記事になりましたが,他
の方のご意見をお願いします.

----------------------------------------------------------------------
Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor,      Department of Sociology
TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp  3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan                                  
----------------------------------------------------------------------

スレッド表示 著者別表示 日付順表示 トップページ

ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。