繁桝です. 本日は大晦日、皆さんは正月気分でしょうか.私は、日頃の怠慢のせいで、本年の 約束をなるべく精算すべく研究室です. さて、その気にかかっていた事の一つに、夏に堀さんから質問のあった件があり、 冬の扇風機のようなものですが、個人的なお答えをしておきます. > その中で3つとりあげます。 > (1)質問としては4の答えをおしえてほしい。多重回答にχ2検定は使え > るのか。どなたか教えてください。 DO’s DON’Tsのシンポでは、森さんが、駄目だというお答えでしたし、fprでも 豊田さんが、NOのお答えだったようです.おそらく、それで、正解なんでしょうが、 私は、少し異なる見解を持っているようです. 実は、この質問は、玉川大学における演習のときの質問なんですが、そのときには、 一つ一つのカテゴリーにさらに、はい、いいえのカテゴリーがあるという設定に して、3次元の表にして分析したらどうかという事をいいました. その後考えて、ディリクレ分布をモデルとして想定し、異なるグループのパラメータを 等しいとする仮説を用いて、尤度比検定量を用いて、χ自乗検定量を導きました. このような事は、どれほど意味があるのか知りませんが、苦労して得たデータならば、 統計的方法に合わせて、データを取捨選択するのではなく、データに合わせて、 そこから、情報を読みとるべく、モデルと分析方法を工夫するべきではないかと 思っています.それがこのシンポのモティベーションでした. 最近も、分散分析で、分散の一様性が確保できないので、分散分析をあきらめるべき でしょうかという質問がありましたが、あきらめる前にデータの変換を種々 試してくださいと答えておきました. > (2)「問題解題」の分散分析の「この意味で、分散分析は、因果性の同定 > のためのオーソドックスな方法である。」 > が[fpr 402]の因果関係についての発言に対応しています。そもそも環境 > をコントロールすれば同じことを再現できるという発想が近代です。近 > 代の申し子「心理学」という考え方から心理学のパラダイムを再考する > 必要があります。スキナー派の基本概念の累積も近代の考え方だそうで > す。パスカルが最初に知見の累積といっているそうです。(今村仁司『 > 近代性の構造』講談社選書メチエ(1994)をベースに近代をとらえていま > す。) > 確かに実験計画法とか分散分析には西洋的楽観主義が みられるようですね. 万物は全て関わりあっているという(?)東洋的立場からいえば、一つのみ 要因を取り出し、他と独立の操作するなど、おこがましいのでしょうか. > (3)因子分析についてグールドへの言及があります。以前は逃げられてし > まいましたが、統計学者はどう答えるのか知りたいところです。 > シンポジウムの前でも答えを教えてください。後でもいいですが。 > グールド(ピアニストのグールドではない.チンパンジーはグルード)の本は 以前堀さんも取り上げられていたけれど、ともすれば、技術主義に走りがちな 我々の必読本でしょうか. さて、この本にある因子の実在説は、スピアマンとかバートの代までですね. (ご存知だとは思いますが).g因子に関してそのような事はあるかなと思ったみたいです. サーストンになると、(教科書には例の7因子が、よくでますが)、すでに、さめた 考え方、1種の座標系である程度の認識のようです.(この点記憶が少し怪しい) しかし、因子分析を使うものの気持ちとして、究極の目標は、おそらく、 因子分析の結果を契機に、実体的な事に迫りたい.たとえば、機能的MRIの結果と 関係付けたいのでしょう.そのためには、安定した結果を得る事が先決だと思います. 通常の場合は、目標はもっと低く、構成概念の良い指標である事をねらっているの でしょうか.しかし、構成概念の指標として、現実世界の説明の鍵概念になるための 関門も実は非常に高い.少なくともサンプルに過度に依存しない因子構造がえられる 事が前提でしょうし、経済指標のように現実の(一応の)説明になっている事の 現実的な試練を経ている事がさらに必要でしょう.(この点、以前の浅野さんの 御手紙に共感します.)共分散構造分析、あるいは、SEMは、理論的発展の 必然だとは思いますが、全て質問紙から、でた因子間の因果関係モデルでは、 現実との足掛かりが乏しいのではないかと愚考致します.
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