[fpr 524] 統計的方法DOs and DONTs(3)

繁桝算男

繁桝です.
本日は大晦日、皆さんは正月気分でしょうか.私は、日頃の怠慢のせいで、本年の
約束をなるべく精算すべく研究室です.
さて、その気にかかっていた事の一つに、夏に堀さんから質問のあった件があり、
冬の扇風機のようなものですが、個人的なお答えをしておきます. 
> その中で3つとりあげます。
> (1)質問としては4の答えをおしえてほしい。多重回答にχ2検定は使え
> るのか。どなたか教えてください。
 DO’s DON’Tsのシンポでは、森さんが、駄目だというお答えでしたし、fprでも
豊田さんが、NOのお答えだったようです.おそらく、それで、正解なんでしょうが、
私は、少し異なる見解を持っているようです.
実は、この質問は、玉川大学における演習のときの質問なんですが、そのときには、
 一つ一つのカテゴリーにさらに、はい、いいえのカテゴリーがあるという設定に
して、3次元の表にして分析したらどうかという事をいいました.
その後考えて、ディリクレ分布をモデルとして想定し、異なるグループのパラメータを
等しいとする仮説を用いて、尤度比検定量を用いて、χ自乗検定量を導きました.
このような事は、どれほど意味があるのか知りませんが、苦労して得たデータならば、
統計的方法に合わせて、データを取捨選択するのではなく、データに合わせて、
そこから、情報を読みとるべく、モデルと分析方法を工夫するべきではないかと
思っています.それがこのシンポのモティベーションでした.
最近も、分散分析で、分散の一様性が確保できないので、分散分析をあきらめるべき
でしょうかという質問がありましたが、あきらめる前にデータの変換を種々
試してくださいと答えておきました.
> (2)「問題解題」の分散分析の「この意味で、分散分析は、因果性の同定
> のためのオーソドックスな方法である。」
> が[fpr 402]の因果関係についての発言に対応しています。そもそも環境
> をコントロールすれば同じことを再現できるという発想が近代です。近
> 代の申し子「心理学」という考え方から心理学のパラダイムを再考する
> 必要があります。スキナー派の基本概念の累積も近代の考え方だそうで
> す。パスカルが最初に知見の累積といっているそうです。(今村仁司『
> 近代性の構造』講談社選書メチエ(1994)をベースに近代をとらえていま
> す。)
>
確かに実験計画法とか分散分析には西洋的楽観主義が みられるようですね.
万物は全て関わりあっているという(?)東洋的立場からいえば、一つのみ
要因を取り出し、他と独立の操作するなど、おこがましいのでしょうか.
> (3)因子分析についてグールドへの言及があります。以前は逃げられてし
> まいましたが、統計学者はどう答えるのか知りたいところです。
> シンポジウムの前でも答えを教えてください。後でもいいですが。
> 
グールド(ピアニストのグールドではない.チンパンジーはグルード)の本は
以前堀さんも取り上げられていたけれど、ともすれば、技術主義に走りがちな
我々の必読本でしょうか.
さて、この本にある因子の実在説は、スピアマンとかバートの代までですね.
(ご存知だとは思いますが).g因子に関してそのような事はあるかなと思ったみたいです.
サーストンになると、(教科書には例の7因子が、よくでますが)、すでに、さめた
考え方、1種の座標系である程度の認識のようです.(この点記憶が少し怪しい)
しかし、因子分析を使うものの気持ちとして、究極の目標は、おそらく、
因子分析の結果を契機に、実体的な事に迫りたい.たとえば、機能的MRIの結果と
関係付けたいのでしょう.そのためには、安定した結果を得る事が先決だと思います.
通常の場合は、目標はもっと低く、構成概念の良い指標である事をねらっているの
でしょうか.しかし、構成概念の指標として、現実世界の説明の鍵概念になるための
関門も実は非常に高い.少なくともサンプルに過度に依存しない因子構造がえられる
事が前提でしょうし、経済指標のように現実の(一応の)説明になっている事の
現実的な試練を経ている事がさらに必要でしょう.(この点、以前の浅野さんの
御手紙に共感します.)共分散構造分析、あるいは、SEMは、理論的発展の
必然だとは思いますが、全て質問紙から、でた因子間の因果関係モデルでは、
現実との足掛かりが乏しいのではないかと愚考致します.

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