[fpr 591] 議論のきっかけ

豊田秀樹

豊田@立教社会です

stok (at) nkrstat.dp.u-netsurf.or.jp さんは書きました:
>そしてその全ての人が最初に適合度基準に関する,あの
>有名な「GFI>0.9」に苦しみました(豊田基準と呼んでみます).

お願いですから,呼ばないでください.1990年に脱稿した当時は,主として
心理学・社会学関係の投稿論文に掲載されたGFIの値を参考にして,0.9と
書きました.自分自身の経験でも,「0.7や0.8でよければ,相当強引なモデル
でもプレゼンテーション可能」であったので0.9という経験則は妥当である
と考えていました.ところが,出版直後から,相談を持ち掛けられ始め
「これではだめだ」と思うようになりました.
実質科学的な吟味を十分に積み重ね,すっきりした役に立つパスを引いたプレ
ゼンテーション可能なはずのモデルのGFIは,観測変数の数が50とか100になると,どう
しても0.9を超えないのです.GFIに限らず,現状の指標はすべて,自由度が
大きくなると印象が不当に悪くなるという問題点が有ります.
観測変数の数が変わることはデータそのものが変わることだから
AICその他の指標もお手上げなのです.また逆にいえば観測変数の数が5以下
の場合はいいかげんにパスを引いても印象が良いのです.
鈴木さんにも以前指摘され,2刷以降「SASによる..(2刷)p106,第2パラ
グラフ」を上記の主旨で加筆修正しました.
そころがそれ以降も相談に来る方は,変数の数が多いし,,,教育心理学・社会
心理学研究に,「....GFIの値は0.9以上であり適合は良い(豊田,1992)」
と引かれることがあり,申し訳ない気持ちになります.

この問題を理論的に解決したいと,この5年位,付かず離れず,ときには真剣に
考えるのですが,アイデアすら浮かびません.私自身まだ諦めていませんが,だ
れか解決してくれないかと思っています.

> そこで,LM検定やワルド検定でモデル模索(?)をした結果,ほとんど常に
>GFIと引き換えに観測変数の個数が少なくなることに不満を持ちました.ちょ
>うど因子分析で,同じデータなのに,主成分法の回転解はそこそこきれいな単
>純構造が得られ変数が分類されるのに,最小2乗法や最尤法の回転解ではいく
>つかの観測変数が外れる事態にも似ています(これは良い発見なのですが).
> せっかく調査した変数を,ほとんど豊田基準を達成するためだけに,説明か

中略

> ところが,いくつかの事例を拝見すると,うまいテクニック(?)が使われ
>ています.質問紙調査で多くの項目を測定しておきながら,共分散構造分析モ
>デルでは,項目群の合計点などの「合成変数」を「観測変数」とするのです.
>アルバクルがAMOSのデモで使ったマーケティング調査データの事例もそうでし
>た.こうなると測定項目を捨てずにすみます.しかも期せずして,質的変数が
>量的変数のようにもなります(期しているのかな?).
> しかし合成変数は潜在変数ではないのか?.インチキ臭い気がしてシラケま
>した.でも,そうやって皆さんは切り抜けているのでしょうか?.相関の高い
>変数群の合計点や第1主成分を「観測変数」としていいのなら,上の問題はほ
>とんどの場合に解決できます.もともと抽象的な質問文を合成して,抽象的な
>観測変数名をつけて,その観測変数を説明する因子(潜在変数)には,一段と
>抽象化された名前(概念)を構成することになる.それでもリアリティーのあ
>りそうな調査もあります(イメージ調査など).

がんばっても,観測変数が多い場合は,不当に印象が悪いことは事実です
から,合成変数を利用することは賢明な選択です.指標の欠点のために,
大切なデータを捨てる必要はありません.
もとの観測変数$i$が何らかの構成概念反映し
x_{i}=a_{i}f+e_{i}
という,立場をとるのなら和得点yは
y=\sum_{i} a_{i} f + \sum e_{i}= af+e
のように,もとの観測変数と同様の構造をもつ「観測変数」になります.
因子分析で$a_{i}$は推定できますし,アルフア係数法で$a$や,$e$の分散
を推定する事ができますから,その情報を利用して$y$を使ってSEMのモデリング
をしてください(立教大学でのWSの後,市川さん(東大)が,ビールを飲みな
がらこれを「希薄化修正パス解析」と命名していました).

http://150.93.32.200/socio/bld2_1/toyoda/gif/FIG2.gif
の説明か,最新の教育心理学研究誌の浦上論文,あるいは前掲拙著p92,6.6.11
1指標条件,または拙著ブルーバックスp199を参照なさって下さい.
個々の観測変数は,多くの場合,和得点の信頼性を高め,モデル構成に
十分貢献しますし,GFIを計算するときには観測変数の数が減ります.



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Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor,      Department of Sociology
TEL +81-3-3985-2321 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University
toyoda (at) rikkyo.ac.jp  3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan                                  
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