[fpr 618] Effect Size

南風原朝和

南風原@東大教育心理です。

堀さん [fpr 602] が,検出力(検定力)の問題から効果の大きさ
(Effect Size, 以下,効果量とします)の推定の問題へと議論を
展開しています。その線に沿って,効果量の推定の問題を少し整理
しておきたいと思います。

分散分析の検出力を調べるため,Cohen (1988) は母集団における
効果量を
 (1)    f=σm/σ
と定義しています(σm は群平均の母集団値の間の標準偏差,σは
群内標準偏差の母集団値)。これは2群のときの効果量
 (2)  d=(m1ーm2)/σ
を拡張したもので,2群のときはf=d/2となります。

一方,この母集団効果量fは,検定統計量Fの(対立仮説のもとで
の)分布,すなわち非心F分布の非心度パラメタλと
 (3)  f=sqrt(λ/N)
という関係があります(Nは全群あわせた標本数)。

ここで,fの推定の問題ですが,狩野さんが教示して下さったように,
λの不偏推定量が
 (4)  λ^=[F*(df2−2)/df2−1]*df1
となることから,これを(3)に代入して,fを
 (5)  f^=sqrt(λ^/N)
によって推定することが考えられます(Fは得られたF値,df1, df2 は
それぞれ分子と分母の自由度)。ただし,この方式ですと,fの2乗の
不偏推定は可能ですが,fの不偏推定はできません。また,λ^が負のと
きはゼロで置き換えることにすると,λ^自体もλの不偏推定量ではなく
なります。

堀さんが引用されている Kirk (1995) は,fを
 (6)    f^=sqrt [(F−1)*df1/N]
で推定しています。これは(1)の分子と分母それぞれの2乗を不偏推定し,
その平方根をとって比をとる,といった,ヒューリスティックとでも呼
ぶべき方法で導いた式ですが,これは(4)の(df2−2)/df2 を近似的に
1とみなしたものに相当します。これもやはりバイアスをもっています。

ということになり,f自体の厳密な不偏推定量はこの中にはないわけで
すが,(4)式に基づく(5)が理論的には最も良いと言えるでしょう。

なお,(3)から分かるように,fは非心度λをNで割った形の指標ですの
で,(6)や SPSS 流の推定式のもつバイアスもNの増加に伴って小さくな
っていくはずです。

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