狩野@筑波大学です いつもは,大体においてROMなのですが,昨日は,一度頑張ってみよう,と 思い直し,たくさん投稿しました.今日はおとなしくしてようと思っていたの ですが....中毒のようなものですね. kano> 共分散構造分析における bootstrap に関しては,このMLにも専門家が おられますので詳し kano> い議論は譲りますが,共分散構造分析では,まだ評価が定まっていない ,と思います.私個 kano> 人的には,かなりイケルと思っていますが,bootstrap 法は好き嫌いが はっきりしており, kano> 統計学をしっかり勉強したやや年配のBIGほど anti-bootstrap であ ると感じています. kano> 共分散構造分析ソフトウェアの多くが(AMOS, EQS, LISREL, SEPATH) bootsrap 法をサポート kano> していますから,今後適用例が増えていくでしょう.一つの欠点は,計 算時間が膨大になる kano> ことです.pentium 200 Hz でどこまで速く処理できるのでしょうね. tnakata> どなたか共分散構造分析における bootstrap の応用に反対する意見 の論文の存在を tnakata> ご存じありませんか。なぜ評価が低いのかに興味があります。 hori> hori> 狩野さんの指摘のように評価が固まってないのであって、低いと定まっ hori> ていないのではないですか。 hori> hori> Bentler はメーリングリストのsemnet でも有用だとわかれば、EQS でも hori> p値などの推定に積極的に使うという発言をしています。 一般的には,bootsrap は分布形に仮定を置かないノンパラメトリック法という のがウリですよね.しかし,その良さは漸近理論によってでしか保証されてい ないのです.[普通の漸近分布の利用や高次の漸近展開式の利用よりは bootstrap が良いことが漸近理論の立場から証明されている.] つまり,有限 標本での良さというのは未知であって,モデルによっては poorly behaved for small samples ということもあり得るのです.従って,共分散構造分析で有用 かどうかは研究しないと分からないということだと思います. bootsrap 法を適用するにあたって共分散構造分析に固有の問題点は「時間がか かりすぎる」ことだと思います.推定に反復法が必要で,母数の数もかなり多 い.さらには,いくつものモデルを試して best モデルを探索しますよね.や はり,一つのモデルを submit して,遅くとも1分ぐらいで結果が見たいです が,bootsrap をやると数時間かかることもある.また,標本を,例えば200 組発生させたとすると不適解や反復未収束解もかなり出てくる.その処理をど うするか.などなど.しかし,いずれにしても実行上の問題です. 応用の観点からは,「標本が得られると結論は一つ決まって欲しい.言い換え ると,標本が与えられた下では,それ以降のランダムネスは好まれない」とい うコンセンサス(?)があるのではないでしょうか.離散分布の下での検定で, 有意水準をきっちりとαに合わせるために開発されたランダム検定というのが ありますね.検定統計量の値を知ったあとでさいころを振って,仮説の採択の 可否を決める,という方法ですが,いまだに使われたのを聞いたことがありま せん.bootstrap 法もこれに似ていて,区間推定では,乱数よって信頼区間が 違ってきます.得られたデータは確率現象の結果だと捕らえるのに,データが 得られた後のランダムネスを拒否するというのは矛盾してますよね.理論家の 私は,もちろんこの考えは受け入れられないのですが,その気持ちは分かりま す. % 上司に解析結果を報告するのに「最後はさいころを振りました」と言えるだ ろうか? 以上は,それなりの理屈なのですが,実は,「統計学をしっかり勉強したやや 年配のBIGほどanti-bootstrap 」というのは,ややうがった見方です.統計 量の分布の近似式を永年研究してきて,膨大な計算で漸近展開式を導出した, というような研究者は,「計算機でシミュレーションすれば,統計量の分布な んてすぐ求まるよ」と言われても素直には受け入れられないでしょう.例えば Bentler 氏は,永年非正規分布の下での統計的推測に携わって来た人です.eqs にも非正規分布に対するオプションがたくさん備わっています.彼は,eqs の 魅力は,パスダイアグラムツールなどではなく非正規分布への対応である,と 言い切っています.彼の半生をかけて取り組んできたテーマ(ちょっと大袈裟? )が,bootstrap で全てまかなえるとしたら... ====================================================================== 狩野 裕 (筑波大学数学系) Phone&Fax: 0298-53-4229(DI) address: 〒305 つくば市天王台1-1-1 Fax: 0298-53-6501(Department) e-mail: kano (at) math.tsukuba.ac.jp ======================================================================
ここは心理学研究の基礎メーリングリストに投稿された過去の記事を掲載しているページです。