鈴木@日経です. 長谷川さん@岡山大: >昨日(1997年2月23日)の朝日新聞に、 >==============以下、長谷川の要約による=========== (略) >というような内容が掲載されていました。 >しかし、その記事に添付されていたグラフを見ると、中国に対して「親 >しみを感じる」比率は、1992-93年を除き、1985年から1996年に至るまで >ずっと減少傾向にあるように見えます。外務省中国課があげた理由で >は、この長期低落傾向を説明できません。 >外務省中国課の「説明」が公式のものなのか、一官僚の単なる感想なの >かはわかりませんけれど、なんだか、頼りない分析のように思えたの >で、ちょっと発言させてもらいました。 私の仕事に少なからず関連する話題を提供されたので,私の「単なる感想」 を述べます. この原稿は「週末原稿」とか「発表物」と呼ばれる記事です.水曜日あたり に官邸クラブ(内閣記者会)に総理府のたぶん審議官クラスが,プレス用の調 査結果報告書を持ってきてブリーフィングします.水曜日に会見して土曜組み にする解禁協定を結び,木曜か金曜に暇を見て原稿を書いておき,ニュースの 少ない週末に掲載するので「週末原稿」. 書いているのは政治部の若手記者が多い.彼は橋本総理番記者.入社してす ぐ地方支局に配属されて交通事故やら火事の記事やら書いて楽しい青春を過ご し,30歳くらいで東京にあがって最初にやるのが総理番.朝から晩まで橋本首 相にくっついて取材.首相が官邸を出て車に乗るまでぴたりと寄り添い,車が 国会に向かうや彼は駆け出す.信号はすべて青.国会の迷路を熟知した記者は 早回りして階段3段飛び,国会玄関で総理車を待つ.全力疾走で駆け出すと何 故かちょうど間に合う.予算委員会に入るまで廊下で首相にくっついて歩く. 彼のことを「駆け出しの記者」という.こんどテレビで首相の背後を注目して ください.彼(彼女)らです. さて,ブリーフ後の質問で記者は「今回の特徴はなんですか」なんて質問す る.審議官が中国,韓国で親近感比率の下がったことを指摘する.すると「ど うしてだと考えますか」と質問.統計学を学んでいる総理府の審議官は因果推 論をしない.記者は何がニュースか,見出しはなにか考える.A記者は「中韓 で親近感過去最低」,B記者は「親中派はじめて非親中派を下回る」.ここで 原因を書かなくてはいけないけれど,総理府は語らず.そこで外務省中国課に 電話する(出向く場合もある).課長あたりにコメントをもらう.これは地の 文で「・・・が影響したとみられる」とだけ書くよりふくらみがある.外務省 は「・・・」と説明している.外交担当者の「見方」を紹介したことになる. もちろん長期低落傾向を,クロス集計表とグラフからなるプレス資料から分析 したわけではない.若手記者はここで外務省取材という小さな経験を積んだ. 「過去最低」と書くか「はじめて下回る」と書くか文章修行した. ============================================================= 鈴木 督久 ( Tokuhisa SUZUKI ) 日経リサーチ 集計解析室 〒101 千代田区神田司町2−2−7 パークサイド1ビル Phone:03-5296-5101(DI) FAX:03-5296-5100(DI) Home:03-5261-7077 stok (at) nkrstat.dp.u-netsurf.or.jp | KGH00763 (at) niftyserve.or.jp =============================================================
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