[fpr 739] 質問

長谷川芳典

長谷川@岡山です。

toyoda (at) rikkyo.ac.jpさんは
<9706030046.AA00542 (at) toyoda.rikkyo.ac.jp>において
"[fpr 737] 質問" という題名で、
次のように書いておられます。
> 最近,学会投稿論文審査のガイドライン等に関心をもって資料を調べたりしています.
> 私は,「雑誌と審査委員の当たりはずれは不可避」だからこそ学会には「審査結果を
> 投稿者に納得させる義務はない」と理解してます.野球の審判と同じです.そうでな
> ければ私自身論文の審査委員など引き受けられません.幾つか「蹴られて投稿して」
> を繰り返せば(和得点の信頼性の定理により)よい論文は必ず掲載されますから,そ
> れで良いのではないでしょうか?

このことに関連して、中島定彦さんが、『学術雑誌に掲載される方法』という本のリビュー
をされています。

中島定彦 (1996). Bruce A. Thyer著 Successful publishing in scholarly journals. 行
動分析学研究, 10(2), 152-154.

また、これは宣伝になってしまいますが、上記の中島さんの書評に対して、長谷川がオープ
ンリビューをやっています。

長谷川芳典 (1996). 書評へのコメント. 行動分析学研究, 10(2), 155-157.

私のコメントでは、“がむしゃらに論文を増やし、手段を選ばすに掲載させる”という行動
が強化されていくことが、心理学の研究の方向にどういう影響を与えるだろうかということ
を考察しております。ぜひお読みいただければ幸いです。

もとの御発言で話題になった『教育心理学研究』については、私はこの学会に入っていない
ので、審査の方法や、論文掲載基準について直接コメントすることはできません。
ただ、今年度に私が担当している卒論演習で、教心研の論文を引用する学生が結構おります
が、学生が要約した限りで知りうる限りでは、ずいぶん中途半端な(失礼)内容が多いな
あ、という気がします。

http://www.okayama-u.ac.jp/user/le/psycho/EX97/index.html

理論的枠組みや実験(調査)計画は、しっかり立てられているとしても、結果のほうは、
“仮説どおりには行かなかった、今後さらに検討が必要だ”という論文が、いくつかありま
した。
例えば、ある材料を用いてある作業をさせたが有意差は見られず、これは実験室の特殊な環
境が影響を与えた可能性がある、というような論文がありましたが、それならば最初から、
影響を与えない環境で検討すればよいではないかと、考えたくなります。
大学院生が学位をとるためのアリバイづくりとして論文を掲載するというのであれば、それ
も必要悪かと思いますけれど、読まされる側は、それではたまったものではありません。


長谷川芳典(岡山大学文学部心理学教室) 署名簡易版
http://www.okayama-u.ac.jp/user/le/psycho/member/hase/h0u.html




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