豊田@立教大学社会学部です 社会学における社会理論に関して調べているうちに理論の構築方法に疑問が 生じました.たとえば,中道實,社会調査方法論,1997,恒星社厚生閣,P46 には次の記述があります. (社会理論とは何かという議論)に続いて <引用ここから> デュルケム,E.の自殺の理論は,このような理論体系の古典的な例である (Homans,G.C.,1964:959). P1.あらゆる集団において,自殺率はエゴイズムの程度と正の相関がある. P2.エゴイズムの程度はプロテスタンティズムの浸透度と正の相関がある. P3.それゆえ,自殺率はプロテスタンティズムの浸透度と正の相関がある. <引用ここまで> 後略 この論法が正しくないことは,明白です.たとえば3つの変数の相関行列が 自殺率 1.00 エゴイ (正) 1.00 浸透度 (負) (正) 1.00 であるかもしれないからです.自殺論が世に出たのは,現在の使用されてい る相関係数が定式化される(ほんのすこし)以前ですからデュルケム自体の 論法を論じることは,この場合,意味がありません.問題なのは,現在,社 会理論の構築に際して上記のような誤った3段論法が使われていることです. 上記の誤った相関の解釈方法が例外的使用ではないような気がしますが,如 何でしょうか? 社会理論の構築に興味のある方にコメントがいただければ幸いです. ---------------------------------------------------------------------- Hideki TOYODA Ph.D., Associate Professor, Department of Sociology TEL +81-3-3985-2323 FAX +81-3-3985-2833, Rikkyo (St.Paul's) University toyoda (at) rikkyo.ac.jp 3-34-1 Nishi-Ikebukuro Toshima-ku Tokyo 171 Japan ----------------------------------------------------------------------
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